新商品「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」にみる大リーグの商魂

去る8月30日(月)、日刊ゲンダイの2021年8月31日号27面に私の連載「メジャーリーグ通信」の第99回「新商品「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」にみる大リーグの商魂」が掲載されました[1]。

今回は、今年8月12日にヤンキース対ホワイトソックス戦を「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」として冠して行った大リーグの目的と意図について検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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新商品「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」にみる大リーグの商魂
鈴村裕輔

大リーグが新たな商品を手に入れた。現地時間の8月12日に行われた「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」である。

野球映画の代表作『フィールド・オブ・ドリームス』にちなみ、撮影現場となったアイオワ州ダイアーズビルに仮設球場フィールド・オブ・ドリームスを建ててホワイトソックスとヤンキースが対戦した試合は、8000人の定員に対してほぼ満員の7832人が観戦した。

また、試合の中継を行ったFOXスポーツは、テレビとインターネットの視聴者数の合計や約590万人と2006年以降の同局のレギュラーシーズンの放送では最多を記録している。

入場券の転売価格も大リーグの公式戦としては破格で、平均1400ドルから1500ドルという値段の高さは、人々がどれだけ今回の試合に高い関心を寄せたかを示す。

1989年の公開後も現在に至るまで米国で根強い人気を誇る同作を背景とした試合の計画が公表されたのは、公開から30年経った2019年8月のことだった。

だが、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、2020年に予定されていた試合は中止を余儀なくされている。

計画は2年越しで実現したのだから、注目と期待が高まるのも当然だった。

さらに、大リーグ公式ウェブサイトや各種のSNSを通じて試合の宣伝を行い、前日には映画に主演したケビン・コスナーも登場する特別映像を公開するなど、機構側も人々の関心を集めるための工夫に余念がなかった。

こうした状況を考えれば、映画で撮影された球場が本塁から外野までの距離が大リーグの規格に合わないため公式戦には使用できず、約500万ドルをかけてコミスキー・パークに模した仮設球場を建てた機構も、投資額以上の見返りを得たと言えるだろう。

周知の通り、映画は1919年のワールド・シリーズで起きたホワイトソックスの選手たちによる八百長問題(ブラック・ソックス事件)を背景としている。

ブラック・ソックス事件が8人の選手が永久追放処分となるなど球界を揺るがしたことを考えれば、機構は過去の醜聞には目をつむり、映画の郷愁的な要素のみを都合よく取り出して新たな商品を生み出したとも考えられる。

ただ、昨年のアストロズによるサイン盗み問題や今季の不正投球問題など、球界はある種の閉塞感に覆われている。

今季の大谷翔平の活躍を機構が大きく取り上げる理由の一つは、球界にとって明るい話題であるという事実だ。

同様に、「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」も球界にとって人々の共感を得られる明るい話題に他ならない。機構が来年もレッズとカブスにより「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」を行うことを発表したのも、当然のことなのである。
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[1]鈴村裕輔, 新商品「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」にみる大リーグの商魂. 日刊ゲンダイ, 2021年8月31日号27面.

<Executive Summary>
The Field of Dreams Game Is a New Beneficial Item for the MLB (Yusuke Suzumura)

My article titled "The Field of Dreams Game Is a New Beneficial Item for the MLB" was run at The Nikkan Gendai on 30th August 2021. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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