『クラシックの迷宮』の放送開始10周年記念特集「リスナー大感謝祭~片山杜秀がリクエストに応える!~」の持つ大きな意義

今夜放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は2013年1月の放送開始から10周年を迎えたことにちなみ、2023年1月21日(土)の放送に続いて聴取者からの投稿に基づいて紹介する作品を選ぶ「リスナー大感謝祭~片山杜秀がリクエストに応える!~」が放送されました。

今回取り上げられたのは、以下の11曲でした。

  1. ジョン・ウィリアムズ/映画音楽『未知との遭遇』から「宇宙人との対話」(指揮:ジョン・ウィリアムズ、管弦楽:ストン・ポップス・オーケストラ)

  2. ウェーバー/歌劇『魔弾の射手』から第8曲「どうして眠れるでしょう~静かに静かに」(指揮:ルネ・ヤーコプス、ソプラノ:ポリーナ・パスツィルチャク、管弦楽:フライブルク・バロックオーケストラ)

  3. ベルク(編曲:テオ・ファーベイ):ピアノ・ソナタ(管弦楽版)(指揮:リッカルド・シャイー、管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)

  4. フランソワ・クープラン(編曲:ルイ・フルーリー)/恋のうぐいす(オーボエ:池田昭子、チェンバロ:大塚直哉)

  5. 真鍋理一郎/映画音楽からの組曲『日本の夜と霧』(指揮:外山雄三、管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団)

  6. 芥川也寸志/テレビドラマ『武蔵坊弁慶』よりテーマ音楽(指揮:芥川也寸志、管弦楽:新交響楽団)

  7. 服部良一/意想曲 1936年(指揮:服部良一、管弦楽:日本クリスタル交響楽団)

  8. リスト(編曲:ホロヴィッツ)/ハンガリー狂詩曲第15番『ラコッツィ行進曲』(ピアノ:ウラディーミル・ホロヴィッツ)

  9. プロコフィエフ/バイオリン・ソナタ第1番第4楽章(ヴァイオリン:ダヴィッド・オイストラフ、ピアノ:ウラディーミル・ヤンポリスキー)

  10. 伊福部昭/ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲第3楽章(指揮:大友直人、ピアノ独奏:舘野泉、管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団)

  11. チャイコフスキー/弦楽セレナード第4楽章(指揮:小澤征爾、演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ)

交響曲から歌謡曲まで、「クラシック」という枠組みの持つ可能性と広がりを模索し、その探求には終わりがないという意味での「迷宮」としての「クラシック」の姿を描き出すのが『クラシックの迷宮』です。

そのような番組の特徴を反映し、今回も映画やテレビの附随音楽から歌劇まで様々な作品が取り上げられました。

また、前回と同様に聴取者からの投稿文も紹介されたことで、聴取者がどのような態度で番組を聴取し、推薦曲を投稿するのかが示されました。

一連の投稿は選曲以上に興味深く、例えば服部良一の『意想曲 1936年』が取り上げられたのは「片山先生のおすすめの服部良一のクラシック作品を」という聴取者からの一文を受けたものでした。

しかも、投稿は服部と朝比奈隆がともにエマヌエル・メッテルに師事した点を踏まえ、大衆音楽家として知られる服部良一も系譜の上ではクラシックの作曲家に連なるという理由を挙げるのですから、番組のみならず聴取者も高い巣潤で音楽に接していることが示されました。

あるいは、1974年に没したオイストラフの音源を希望する投稿に付された「オイストラフはこの番組に似つかわしくないかも知れないけれど」という一文を受けて「そんなことはありません、いずれ没後50周年企画を予定しておりまして」と今後の放送の予定を紹介するなど、投稿を通した聴取者と司会者の交流の様子が披露されることは、意義深いものでした。

それだけに、多くの投稿があったものの、希望のあった作品を全て取り上げられなかったとして、今後も同様の聴取者の投稿に基づく特集を計画する旨が示唆されたことは、印象的でした。

このように、今回の「リクエスト特集」は、改めて『クラシックの迷宮』の持つ多様な魅力を聴取者に強く印象付けたものであったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Shows Its Diverse Characteristics and Importance Again (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" reaches its 10th Anniversary and broadcasted the featured programme again on 23rd March 2024. On this occasion, we celebrate this memorial opportunity and examine the meaning of the programme.

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