NHK交響楽団第1938回定期公演

今日は、18時から20時までNHK FMでNHK交響楽団の第1938回定期公演の実況中継を聴取しました。会場は東京芸術劇場コンサートホールでした。

今回は前半にモーツァルトのクラリネット協奏曲、後半にマーラーの交響曲第1番「巨人」が取り上げられました。クラリネット独奏は伊藤圭、指揮は沼尻竜典でした。

いずれも広く知られた曲であり、NHK響にとってもいつでも演奏できる作品の一つであるだけに、MUSIC TOMORROWなどの公演では共演したことはあっても定期公演は初登場となった沼尻と楽団の相性を確認するには格好の選曲となりました。

第1曲目のモーツァルトは、沼尻がトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズを結成して古典派の音楽を継続して取り上げて来たことを思い出させる内容で、独奏を務めたNHK響の首席クラリネット奏者でもある伊藤の華やかさを備えた演奏と相俟って、躍動感に溢れる仕上がりとなりました。

また、第2曲目のマーラーは第1楽章の冒頭から演奏者から高い集中力を引き出しつつ、音量が大きいという楽団の特長を随所に巧みに織り込んだ演奏でした。ややもすれば飾り気の多い演奏となりがちなマーラーに相対して、指揮者の役割を最小限にすることで演奏者の存在感の最大化を図るという沼尻の手法は、NHK響との意思の疎通の円滑さを窺わせるものでした。

これまで定期公演での共演の機会がなかった沼尻の起用は、新型コロナウイルス感染症の拡大による外国からの指揮者の来日の制限を受けたある種の緊急的な措置であろうことは容易に推察されます。

一方で、本来の人選であれば登壇の時期はより遅かったかも知れない沼尻の定期公演への招聘が実現したことで、NHK響にも新たな選択肢が加わったことになります。

その意味で、今回の人選は多分に「コロナ下」ならではの出来事でありつつも、沼尻の定期公演への定期的な登場が期待されるという結果をもたらしのでした。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra the 1938th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1938th Subscription Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre on 25th September 2021 and broadcasted via NHK FM. In this time they performed Mozart's Clarinet Concerto and Mahler's 1st symphony. Solo clarinet was Kei Ito and conductor was Ryusuke Numajiri.

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