NHK交響楽団第2012回定期公演

去る5月22日(水)、23日(木)、サントリーホールにおいてNHK交響楽団の第2012回定期公演が行われ、6月1日(土)に第1日目の実況録音がNHK FMで放送されました。

今回は前半にブラームスのピアノ協奏曲第1番、後半にニルセンの交響曲第2番が演奏されました。ピアノ独奏はルドフル・ブフビンダー、指揮はファビオ・ルイージでした。

2010年4月の第1617回定期公演でヘルベルト・ブロムシュテットの指揮によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番を演奏して聞き手に深い感銘を与えたブフビンダーが現在のピアノ界を代表する名手であることは論を俟ちません。

独奏だけでなく伴奏の譜面も隅々まで知り尽くしたうえで、伴奏を押しのけるのでも、伴奏の陰に埋もれるのでもなく、彼我の関係を瞬時に捉えるだけでなく、時にオーケストラを率い、時にオーケストラを内側から盛り立てるような演奏を行うのがブフビンダーです。

一音一音を丁寧に弾き分けるブフビンダーの艶やかで丸みのある演奏は豊かな熱量を秘めたブラームスを演奏するに好適で、この日も文字通り小節ごとに細やかな表情の変化や陰影の移ろいが印象深いものでした。

ルイージも先達ブフビンダーの音楽作りの特徴をよく理解し、いつもながらに細部まで手入れをした後に最後の仕上げの部分にゆとりを持たせることで、活き活きとした輪郭を描き出すことに成功しました。

また、後半のニルセンは、やはりブロムシュテットが定期公演を通してNHK響に定着させ、ルイージの前任であるパーヴォ・ヤルヴィも得意とした作曲家です。

今回の選曲は、いわば楽団の恩人であり発展の貢献者である2人の衣鉢を継ぐかのようなものであり、どのようなニルセンの音楽を仕立てるのか、ルイージの取り組みが注目されました。

「4つの気質」という副題が示すように性格の異なる各楽章の特徴をよく押さえた演奏となった今回は、特に第1楽章の劇的な旋律を十分な熱量をもって演奏されたことで、推進力に富んだブロムシュテット、様式性を追求したヤルヴィとは異なる活力を備えたニルセンとなりました。

その意味で、ブフビンダーとルイージによる今回の定期公演は、あるいはNHK交響楽団の過去と未来とを繋いだ回になったと言えるかもしれません。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2012th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)


The NHK Symphony Orchestra held the 2012th Subscription Concert at the Suntory Hall on 22nd and 23rd 2024 and the first day was broadcast via NHK FM on 1st June 2024. In this time, they performed Brahms' 1st Piano Concerto and Nielsen's 4th Symphony. Solo piano was Rudolf Buchbinder and conductor was Fabio Luisi.

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