「日経平均株価の最高値更新」はいかなる意味を持つか

本日、東京株式市場の日経平均株価は終値で前日より836円高い3万9098円68銭を記録し、従来の最高値である1989年12月29日の3万8915円87銭を更新しました。

1990年の大発会から値を下げ始めた日経平均株価は、日本企業の業績回復や物価下落からの脱却への期待から海外の買いが進み、34年1か月と24日ぶりの新記録達成となりました。

前回はいわゆるバブル景気のさなかであり、土地や株式への投資が過剰となり、実際の経済のあり方以上に人々の思惑が景気を下支えしていた時代でした。

そのため、この先の永遠に続くかと思われた株価の上昇はひとたび調整局面に入ると人々の猜疑心を喚起し、利食い売りの加速によって株価の下落が加速し、その後の長期の株価の低迷に直面したことは周知の通りです。

一方、今回の株価の高騰は、2022年2月24日のロシアによるウクライナの侵攻に端を発する世界的な資源高の影響と米国との金利差による円安とが日本の物価上昇を招き、長く続いたデフレーションの克服という状況をもたらしたという側面が強いといえます。

人々の生活に直結する賃金の上昇は物価の上昇に遅れる形で進んでおり、結果として実質賃金の下落を招き、暮らし向きの改善を実感する機会に乏しいの実情です。

いわば、1989年当時は経済の実態を超えた思惑が株価の最高値をもたらし、今回は日本経済の実力を超えた外的な要因によって最高値を更新したことになります。

その意味で、前回と同様に今回も危うい状況の下での記録の達成であり、このまま史上初の日経平均株価の4万円台まで進むかは予断を許さないところです。

それでも、「失われた10年」と呼ばれた長期の経済の低迷が20年となり、30年を迎え、国力の衰退が叫ばれて久しく、かつて「世界第2位の経済大国」と呼ばれた日本はいつの間にか「もはや先進国ではない」とまで指摘されるようになりました。

その様な中で、従来の記録を12473日ぶりに塗り替えたことの心理的な意義は小さくありません。

経済活動であれ景気であれ、最後は人がかかわることであるなら、今回の出来事を契機として実体経済の活性化が促進される可能性も高まることでしょう。

それだけに、今後の株価の動向だけでなく、日本経済の行方も大いに注目されるところです。

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Nikkei 225's New Highest Record? (Yusuke Suzumura)

Japan's benchmark Nikkei 225 breakes its 1989 record 38,915.87 and gets 39,098.68 on 22nd February 2024. On this occasion, we examine the meaning of new record to real economy of Japan and mind of Japanese people.

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