文化の比較の観点から考える大谷翔平選手の声明の持つ意味

現地時間の3月25日(月)に大リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手が行った「野球賭博疑惑」に関する記者会見について、本欄の理解は昨日ご紹介した通りです[1]。

ところで、大谷選手の記者会見についてありがたくも報道各社から見解を求められた際、私は「完全に米国向けの声明であり、記者会見である」とお話しました。

もとより米国内で起きた出来事だけに、米国の報道機関が様々な報道を行うのは当然です。そして、そのような報道に対して自らの立場を明らかにしたのが今回の記者会見でした。

従って、声明を受け取る側が米国の報道機関であることは明白です。

こうした外形的な要因だけでなく、大谷選手の声明の内容そのもに即しても、誰を対象としているかは容易に分かります。

すなわち、会見の中で謝罪に類する表現が一切なかったことが、米国向けの声明であったことを示します。

日本であれば何はなくとも冒頭に「すみませんでした」「ご迷惑をおかけしました」という陳謝とともに頭を下げた後に自らの考えを表明するのが、このような記者会見の通例といっても過言ではありません。

しかし、大谷選手が事件に対する自らの理解と野球を含む一切のスポーツ賭博と関係していないことを表明して会見を終えました。

これは、日本的な感性からすれば違和感があるかもしれないものの、どのような場合であっても一言でも謝罪に繋がる表現があれば「やはり関係していたのだ」と新たな疑惑を生むのが米国的な心性を考えれば当然の対応となります。

それだけに、会見一つをとっても日米の違いが表れることが今回の一件で改めて示されたのは、文化の比較という観点からは意義深いものであったと言えるでしょう。

[1]鈴村裕輔, 「野球賭博疑惑」に関する大谷翔平選手の声明を理解するために重要な観点は何か. 2024年3月26日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/5c81f29d83e45e2dd85d6e6d2bdfc583?frame_id=435622 (2024年3月27日閲覧).

<Executive Summary>
The Meaning of Mr Shohei Ohtani's Statement Seen from the Viewpoint of Comparative Culture (Yusuke Suzumura)

Mr Shohei Ohtani of the Los Angeles Dodgers held a press conference and express his statment for the "Massive Theft Issues" on 25th March 2024. On this occasion, we examine a characteristic of Mr Ohtani's statement based on the viewpoint of comparative culture.


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