【追悼文】鈴木瑞穂さんについて思い出すいくつかのこと

去る11月19日(日)、俳優の鈴木瑞穂さんが逝去しました。享年96歳でした。

舞台、映画、テレビなどで活躍し、俳優としてだけでなく外国の映画やテレビドラマの吹き替えでも活躍するなど、鈴木さんの活動の幅が広かったことは周知の通りです。

とりわけ、レイモンド・バーが主演したテレビドラマ『ペリー・メイスン』では、旧作、新作のいずれでも主役のペリー・メイスンの吹き替えを担当し、冷静沈着でいながら人間味溢れるバーの演ずるメイスンに、より豊かな表情を加えていました。

また、テレビドラマでは特にNHK大河ドラマで重要な役どころを担当し、特に『葵 徳川三代』(2000年)では京都所司代として西国統治の要を果たした板倉勝重を好演し、時に重厚で、時に剽悍な演技によって作品の魅力を一層高めたものでした。

一方、多数出演した映画についても、『日本沈没』(1973年)の科学技術庁長官役で見せた、迫り来るもののいつ訪れるか分からない大地震への恐怖と、限られた対策しか施せないことへの焦りを、印象深く表現していました。

あるいは、『ゴジラ』(1984年)では『日本沈没』で田所博士を好演した小林桂樹さんが務める首相の傍らで外務大臣を演じ、鑑賞する者の好奇心を喚起したものです。

これに加えて、1995年のNHKのテレビドラマ『憲法はまだか』で演じた吉田茂も、大胆な演技と繊細な表現とが混然一体となり、視聴者の注意を惹きつけてやみませんでした。

ただ、1952年に滝沢修や宇野重吉らとともに結成に参画した劇団民藝に始まり、鈴木さんの出発点である舞台については、NHK教育テレビの実況録画を視聴するのみで、ついに実際に劇場で鑑賞できなかったのは、私にとって心残りとなってしまいました。

このように、昭和27年以来多くの分野で様々な成果を残してきた鈴木瑞穂さんのご冥福を、改めてお祈り申し上げます。

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Mizuho Suzuki (Yusuke Suzumura)

Mr. Mizuho Suzuki, an actor, had passed away at the age of 96 on 19th November 2023. On this occasion, I remember miscellaneous memories of Mr. Suzuki.

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