「東京オリパラ汚職・談合事件」を考える上で重要な視点は何か

昨夏に明らかになった東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件は、昨年末から談合事件へと広がり、数多くの逮捕者を出すに至っています[1]。

今回の汚職・談合事件の問題の一端は、国や各都道府県が大会の経費の多くを負担しているにもかかわらず、大会の運営に当たる大会組織委員会が公的機関ではなく、公益法人ではあっても私的な組織であるため、国による情報公開制度の対象となっておらず、不明朗な経費の使用の温床となっていたという点にあります。

また、大会組織委員会はすでに解散し、現在は清算法人が業務を引き継ぎ、その清算法人も今年3月末で解散する予定[2]です。

これは、大会を巡る事件の全容の解明を待たず責任を負うべき機関が消滅することに他ならず、「清算作業を進めるために作られた法人で、調査を実施できるだけの人員もいない」といった清算法人担当者の発言[2]は、無責任のそしりを免れないところです。

それでは、どうしてこのような汚職・談合事件が起きるとともに、無責任な対応が生じるのでしょうか。

一面において、これは、組織委員会と清算法人は所与の実務を遂行することを目的とし、それ以上の事柄についてはしかるべき対応を行える権能が規定されていないという、現実的な問題の結果です。

あるいは、他面では例えば東京オリンピックの開催経費が高額であったため、談合の対象となった各事業の契約金額相対的に少額となり、大会関係者の注意を惹くことが難しくなっていたということが考えられます。

すなわち、談合容疑の対象となっている金額は約400億円[3]です。金額そのものは高額ではあっても、東京オリンピックの開催経費約1兆4千億円の約2.8%に過ぎないことが分かります。

いわば今回の談合は大会の開催経費全体からみれば誤差の範囲に留まり、深刻な罪科を問われるべきものではないという意識が関係者の間にあったとしても不思議ではありません。

しかし、確かにかつて談合を「必要悪」とした時代はあったものの、現在では受注者を競争入札によって決めるという発注者の意図をゆがめる不公正な行為という理解は広く受け入れられているものですし、公費の支出に伴う贈収賄や不正な利益の供与も許されるものではありません。

その意味でも、今回の事件については上記のような事項を念頭に置きつつ、当局による全容の解明が望まれるところです。

[1]電通、入札前に支援チーム. 日本経済新聞, 2023年2月15日朝刊43面.
[2]組織委 3月完全消滅. 読売新聞, 2023年1月1日朝刊34面.
[3]五輪談合 特命随契、見積額の98%. 毎日新聞, 2023年2月12日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is an Important Point to Clarify the Tokyo Olympic and Paralympic Games Scandal? (Yusuke Suzumura)

The Tokyo Olympic and Paralympic Games Scandal becomes a serious social issue. On this occasion, we examine an important viewpoint to clarify the whole of the issue.

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