NHK交響楽団第1960回定期公演

昨日、NHK FMでNHK交響楽団の第1960回定期公演の実況中継を聴取しました。会場は東京芸術劇場コンサートホールでした。

今回は、プーランクのバレエ組曲『牝鹿』とオルガン協奏曲、ガーシュウィンの『パリのアメリカ人』が演奏されました。オルガン独奏はオリヴィエ・ラトリー、指揮はステファヌ・ドゥネーヴでした。

この日の選曲がフランス音楽が得意というだけでなくフランスに関わりのある音楽も得意とするドゥネーヴの持ち味がよく発揮されものであるのは、一見してすぐ分かるもので、実際の演奏はそのような直観的な理解を支持するものでした。

プーランクのオルガン協奏曲はこの日の白眉で、東京芸術劇場の自慢のモダン・オルガンを利用した演奏は、ラトリーの滑らかさと躍動感を巧みに使い分けによって作品の魅力を一層際立たせました。

NHKホールにも重厚なオルガンが備え付けられているものの実際に使用される頻度が少なく、半ば定期公演の撮影場所になっていることを考えれば、オルガンを日常的に利用することが可能な東京芸術劇場という会場の利点がよく活かされていたと言えるでしょう。

また、ガーシュウィンの『パリのアメリカ人』は、開放感の中に時折姿を見せる伏し目がちな様子が、例えばバーンスタインとニューヨーク・フィルの軽妙な演奏や映画『巴里のアメリカ人』(原題:An American in Paris、1951年)におけるジーン・ケリーの快活な踊りとは異なる、より鮮やかな輪郭を作品に与えていました。

これは、ガーシュウィンが体験したパリの様子を書き留めた譜面を、パリでの生活の長いドゥネーヴの感性を通して再現した結果で、そのためにガーシュウィンの作品の持つ広がりが活き活きと蘇ることになりました。

『牡鹿』における、手堅さの中に余白を残す演奏も含め、構成力と感受性の配合の度合いを心得たドゥネーヴの手腕を堪能できた公演でした。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra the 1960th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1960th Subscription Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre on 17th June 2022 and broadcasted via NHK FM. In this time they performed Poulenc's "Les biches" and Organ Concerto, and Gershwin's "An American in Paris". Solo Organ was Olivier Latry and conductor was Stéphane Denève.

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