「教科担任制」の導入を検討する際に重要な点は何か

去る7月21日(水)、文部科学省は2022年度から小学校5年生及び6年生で導入を予定しているいわゆる「教科担任制」について、英語、算数、理科、体育を対象とする方針を明らかにするとともに、2022年度予算の概算要求に関連費用を加算する方針であることを明らかにしました[1]。

「教科担任制」については、現在の小学校では基本的に学級担任がほぼすべての教科を教える「学級担任制」が採用されています。

ただし、全ての教員は一定以上の水準を満たしているとはいえあらゆる科目を得手とすることは例外的であり、ほとんどの場合、得意、不得意とする科目があります。

そのため、児童一人ひとりの各教科の基礎となる学力を養う、あるいはそれぞれの教科への興味や関心を喚起するという点からは、教員間の能力の隔たりを可能な限りなくすことは好ましいと言えるでしょう。

また、教員にとっても、1年生の担任となり、そのまま6年生まで持ち上がりで担当する場合、ある教科を教授する機会は6年後となる可能性があります。その結果、各学年の各単元の授業の振り返りと改善を行うことが難しくなりかねません。

一方、「学級担任制」の利点としては、小学校1年生から小学校6年生という身体的にも精神的にも成長が著しい時期に、担任が継続して接することで一人ひとりの児童とより密接な関係を築くことができるという点が挙げられます。

ところで、「教科担任制」は高い専門性の求められる教科の内容に対応する事を目的とするとともに、教育活動だけでなく学校運営や課外活動への取り組みなどが必要な教員の多忙化を緩和するという側面もあります。

1学級の編制を現行の40人から35人に引き下げるのも、教員の多忙化の緩和とそれに伴うより質の高い教育の提供に向けた取り組みでもあります。

従って、「教科担任制」と学級編制の標準の削減は共通の目的を持つ施策であるという点には注意が必要です。

このように考えれば、例えば「教科担任制」を学級編制の削減の代わりとすることや、学級編制の変更による学級数の増加と経費の増額を理由として既存の教員のみで「教科担任制」を実施し新規の人材の雇用にかかる予算が手当てされないといった事態は避けられなければなりません。

何より、「教科担任制」の導入は児童の将来にも大きな影響を与えるのですから、より実効的な取り組みがなされることが期待されのです。

[1]小学校「体育」も教科担任制. 日本経済新聞, 2021年7月22日朝刊32面.

<Executive Summary>
What Is an Important Viewpoint to Introduce the Subject Teacher System? (Yusuke Suzumura)

Now the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology plans to introduce the Subject Teacher System to the elementary school from the fiscal year to 2022. In this occasion we examine an important viewpoint of the policy.

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