【追悼文】クシシュトフ・ペンデレツキさんを巡るいくつかの思い出

本日、ポーランドの作曲家で指揮者のクシシュトフ・ペンデレツキさんが逝去しました。享年86歳でした。

8つの交響曲や4作の歌劇、『広島の犠牲者に捧げる哀歌』などの管弦楽曲、あるいは多数の合唱曲で知られるペンデレツキさんが現代のポーランドを代表する音楽家であることに異論はないでしょう。

私がペンデレツキさんのことを知ったのは岩城宏之さんの著書を通してのことであり、「かつてポーランドの音楽家と言えばパデレフスキだったが、これからは自分がポーランドの音楽家の代表となる」という気概が伝わったものでした。

その様なペンデレツキさんを直接目にしたのは、1996年6月18日(火)にサントリーホールで行われたMusicTomorrow1996でした。

この時は第44回尾高賞の受賞作である野平一郎さんの室内協奏曲第1番と林光さんのヴィオラ協奏曲「悲歌」、そしてペンデレツキさんの交響曲第3番が演奏されました。

私は、この演奏会でペンデレツキが左利きであり、左手で指揮棒を持つ様子を初めて目の当たりにしました。これまで、文献や映像で左手で指揮棒を持つ指揮者のことは知っていたものの、実際に目にするのは初めてであったため、大変印象深く思われたものです。

また、この日は石田一志さんの司会によるプレトークがあり、尾高賞の受賞者であった野平さんと林さんに加え、ペンデレツキさんも登壇しました。

いずれも優れた作曲家である3人がそれぞれの音楽に対する知見を披露するプレトークは興味深いものでした。

とりわけ、参加者の中で最も控え目であった野平さんと、時に堂々とした体躯からは想像できないおどけた表情を見せながらも20世紀から21世紀にかけての音楽のあり方を雄弁に語っていたペンデレツキさんの姿が懐かしく思い出されるところです。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Professor Emeritus Dr. Krzysztof Eugeniusz Penderecki (Yusuke Suzumura)

Professor Emeritus Dr. Krzysztof Eugeniusz Penderecki, a composer and conductor, had passed away at the age of 86 on 29th March 2020. On this occasion I epxress miscellaneous impressions of Professor Emeritus Dr. Penderecki.

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