NHK交響楽団第1977回定期公演

昨日、NHK交響楽団の第1977回定期公演が行われ、NHK FMの実況中継で鑑賞しました。開場はNHKホールでした。

今回は前半に尾高尚忠のチェロ協奏曲、後半にパヌフニクの『カティンの墓碑銘』とルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲でした。チェロ独奏は宮田大、指揮は尾高忠明でした。

尾高のチェロ協奏曲は宮田の情感豊かな演奏が熱量の高い作品の魅力を鮮やかに描き出しており、今後この作品がより多くの演奏の機会を得ることを期待させる仕上がりとなっていました。

パヌフニクの『カティンの墓碑銘』は約8分の小品ながら、いわゆるカティンの森事件の犠牲となったポーランド人の戦争捕虜への追悼という内省的で緊張感の強い音楽を、その性格に従って忠実に描き出す演奏となりました。

どのような作品に対しても過度な表現を抑え、どちらかと言えば淡泊ともいえる演奏を持ち味とする尾高の特徴が、聞き手に与える印象を一層強くしたのが、今回のパヌフニクであったと言えるでしょう。

一方、ルトスワフスキの代表作である管弦楽のための協奏曲は、チェロ、ホルン、そして弦楽器へと繋がる第1楽章の冒頭の展開から聞き手の注意を惹きつけて離さない、この日の公演の仕上げと称するにふさわしい内容でした。

第3楽章の終結部における木管楽器のコラールが細部まで磨き上げられた演奏であったことは、この作品の持つある種の素朴な力強さの中でどのように位置付けられるのかという点を含めて、興味深いものです。

尾高、パヌフニク、ルトスワフスキという組み合わせは、ワインガルトナーの下で学んだ前二者とワルシャワで活動した後二者という関係を考えると絶妙です。

また、尾高賞に名を留めるもののその作品が演奏さられる機会は多くない尾高を定期公演で取り上げることは、尚忠と忠明という親子の間柄を考慮するとしても、その価値の高さは疑いえません。

それだけに、今後もこうした取り組みが様々な形で続くことが願われるところです。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1977th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1977th Subscription Concert at the NHK Hall and broadcasted via the NHK FM on 4th February 2023. In this time they performed Otaka's Cello Concerto, Panufnik's Katyń Epitaph, and Lutosławski's Concerto for Orchestra. Solo cello was Dai Miyata and conductor was Tadaaki Otaka.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?