『クラシックの迷宮』が今日に伝える石丸寛の多様な功績

去る3月25日(土)にNHK FMで放送された『クラシックの迷宮』は、今年生誕101年を迎えた指揮者で作曲家の石丸寛を特集する「作曲家・指揮者 石丸寛を聴く ~NHKのアーカイブスから~」が放送されました。

指揮者として活躍するとともに作曲家としても多くの作品を手掛け、大学生や市民の楽団も積極的に指揮して交響管弦楽の普及に尽力した人物というのが、番組の冒頭での司会の片山杜秀先生による石丸の像です。

この紹介に従い、今回はNHKに保存されている音源のうち、東京フィルハーモニー交響楽団を指揮した『アルト・サクソフォーンと管弦楽のための2楽章』(サキソフォン独奏:坂口新)音楽物語『幸福な王子』、『みんなのうた』の「アルプス一万尺」などの編曲、さらに九大フィルハーモニー・オーケストラとのチャイコフスキーのセレナード第1番の第1楽章などが取り上げられました。

いずれも興味深い内容ながら、特に印象的であったのはアルフォードの作曲と中原光夫の作詞による「口笛吹いて」、『幸福な王子』、九大フィルとのチャイコフスキーでした。

アルフォードは歌唱部の軽快さと間奏の重厚さとの対比、とりわけ間奏部の雄渾さを湛えた表情に石丸の編曲者としての手腕の高さの一端がよく示されていました。

また、『幸福な王子』は音楽劇としての完成度の高さとともに音楽そのもの陰影に富む様子が、実演家の視点をよく反映しており、ここにも石丸の作曲家としての力量のほどが窺われました。

何より最後に取り上げられた九大フィルとの公演の実況録音は、特に内声の豊かさが魅力的で大学生の楽団に対しても真摯に向き合い演奏者の能力を最大限引き出す様子を知ることが出来ました。

「アマチュアオーケストラも積極的に指揮し」という番組冒頭の片山先生の一言との響き合いを含め、いつもながらに細部まで彫琢された番組の構成は、今では指揮者としてのみの活動が記憶されがちな石丸寛の多面的な姿を改めて今日に伝えるもので、「生誕101年記念」にふさわしい内容であったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The "Labyrinth of Classical Music" Shows Hiroshi Ishimaru's Efforts and Achievements (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured "Hiroshi Ishimaru's Activities as a Conductor and Composer" on 25th March 2023. It might be a meaningful opportunity for us to understand Ishimaru's efforts and achievements for classical music in Japan.

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