「党内事情を反映した人事」と言われないために細田博之衆議院議長がなすべきことは何か

去る6月9日(木)、衆議院本会議において立憲民主党が提出した細田博之衆議院議長に対する不信任決議案が採決され、自民党及び公明党の反対多数で否決されました[1]。

日本国憲法下で衆議院正副議長に対する不信任決議案が可決されたのは、1961年の久保田鶴松副議長の事例のみです。

しかも、久保田副議長は野党社会党の出身で、衆議院の過半数は自民党が制していました。そのため、この時は多数党による少数党出身の副議長への不信任決議案という特殊な形態であり、これまで他に類例がないのも当然です。

一方、信任に値しない理由として以下の3点があげられたこと[2]は見逃せません。

(1)衆議院の一票の格差是正への否定的な態度
(2)国会の議論を経て決められた議員定数や歳費への否定的な態度
(3)女性記者をはじめとする多くの女性に対するセクシャルハラスメントの疑惑

確かに、国会議員の歳費の増額や議員定数の増員といった細田議長の指摘には、国会議員の処遇だけでなく、国民の選良のあり方がいかにあるべきかという重要な視点を含みます。

ただし、所信を国会の審議の場ではなく自民党議員のパーティーなどの私的な場で披露するだけで終わることは、実に残念なことと言わねばなりません。

それだけに、細田議長には、今後自らの行動を律しつつ三権の長の一人として職務に製錬するのでなければ、「安倍晋三元首相に派閥会長の座を譲るという自民党内の事情を反映した人事」といった誹りを免れることはできないでしょう。

細田議長の今後の取り組みが注目されます。

[1]内閣不信任案 否決. 読売新聞, 2022年6月10日朝刊1面.
[2]衆議院議長細田博之君不信任決議案(第二〇八回国会、決議第五号). 衆議院, 公開日未詳, https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/ketsugian/g20817005.htm (2022年6月14日閲覧)

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the Resolution of No Confidence for Speaker Hiroyuki Hosoda? (Yusuke Suzumura)

The Resolution of No Confidence for Speaker Hiroyuki Hosoda was submitted to the House of Representatives and denied at the Lower House on 9th June 2022. In this occasion we examine a meaning such submission to the Diet.

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