【開催報告】第8回石橋湛山研究学会

昨日は、13時から17時30分まで立正大学9号館9B23教室において、第8回石橋湛山研究学会が開催されました。

昨年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により大会が中止されたため、今回は2年ぶりの実施となりました。

まず、会員総会が行われ、世話人会が任期満了となったことに伴う新世話人会の人事が報告され、現任の世話人の重任が満場一致で可決されました。

次に、第1部の研究報告では、池尾愛子先生(早稲田大学)、権錫永先生(北海道大学)、和田みき子先生(明治学院大学)の3名が報告を行いました。また、今回は初の試みとして各報告にコメンテーターが配され、池尾先生の報告を吉川洋先生(立正大学)、権先生には戸部良一先生(防衛大学校)、和田先生を鎮目雅人先生(早稲田大学)が担当されました。

池尾先生は「天野為之と東洋経済新報―石橋湛山との関係を意識して―」と題し、早稲田大学の基礎を築いた「早稲田四尊」とされ、『東洋経済新報』の創刊にもかかわった天野為之の貿易、金融、財政、経済政策、外交などについての議論と、石橋湛山の所説の関係を検討し、天野の東アジアでの関税同盟と植民地放棄論と石橋の小日本主義などが比較されました。

権先生の発表「「帝国主義の誤謬」に関する反省的思考--小日本主義と外務省革新派グループの極東連合構想」では、「自利」の観点から「帝国主義の誤謬」を指摘し、転換を図ろうとする構想として石橋湛山の「小日本主義」、北一輝の「帝国的人道主義」、外務省革新派グループの「極東連合構想」が比較され、「自利の論理」に徹した石橋と、「利己・利他不二の論理」となった北と外務省革新派グループという相違が明らかにされました。

和田先生の論題は「石橋湛山のソーシャル・ダンピング論」で、1933年8月に行われたバンフ太平洋会議、1934年4月のチャタム・ハウス講演、同じくフェルナンド・モーレットの来日などの出来事を通して、石橋湛山のソーシャル・ダンピング論が米欧の対日批判の緩和に貢献したことが、高橋亀吉の議論や上田貞次郎の取り組みなどとともに実証的に検討されました。

第2部のシンポジウム「石橋湛山と宗教」は、パネリストに三原正資先生(日蓮宗現代宗教研究所)、望月詩史先生(同志社大学)、橋本五郎先生(読売新聞社)をお招きし、橋本先生の司会により行われました。

最初に三原先生が石橋湛山と日蓮宗の関わりを検討するとともに、石橋は僧侶、宗教家としての自覚を持ち、世俗の職業についても仏教の教えを活かした可能性が指摘されました。次に望月先生が、石橋と福沢諭吉の宗教に対する態度の比較を行うとともに、晩年の石橋の「宗教回帰」をいかに評価すべきかという問題が提起されました。最後に、橋本先生が宗教と現実政治の接点を検討するとともに、石橋の思想と行動の背景に日蓮が存在したことを示されました。

その後、パネルディスカッションが行われ、「『人間・石橋湛山』と『政治家・石橋湛山』の背景にある宗教心の意味」、「理念と現実のバランス」「宗教だけでなくあらゆるものを包含する存在としての石橋湛山」、「教育者としての宗教への接し方」などの点について意見が交わされました。

なお、今回の世話人の改選で私は引き続き世話人役を拝命いたしました。

個人名を冠し、研究者だけでなく広く市民にも開かれた特色ある学会である石橋湛山研究学会が今後も一層発展するよう、ささやかながら会の運営に寄与できればと考えております。

<Executive Summary>
The 8th Conference of the Ishibashi Tanzan Society (Yusuke Suzumura)

The Ishibashi Tanzan Society held the 8th Conference at Rissho University on 11th December 2021. In this time there were three presentations and public symposium.


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