『鎌倉殿の13人』は「大河ドラマの生き残り」に寄与できるか

本日20時から、NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が始まります。

1963年以来続くNHKの看板番組である大河ドラマは、2009年以降平均視聴率の低下が進んでいます[1]。

もとより、視聴者のテレビ番組の受容の方法が多様化し、Netflixなどのオンデマンド配信が普及した現在においては、平均視聴率のみが番組の価値を決めるものではないことは明らかです。

その一方で、すでに本欄が指摘するように、2001年以降の大河ドラマの主役は、以下の3つの類型に分けられます[2]。

(1)歴史上の意義は大きいものの第一線で活動した時期が限られている人物(北条時宗、篤姫)

(2)歴史上に名前は留めているものの活動の範囲や後世に伝えられる事績が限られている人物(宮本武蔵、直江兼続、黒田官兵衛、真田信繁、明智光秀、渋沢栄一)

(3)歴史的な意義と具体的な逸話に乏しい人物(山之内一豊の妻、江姫、新島八重、杉本文、金栗四三、田畑政治)

それでは、『鎌倉殿の13人』の場合はどうでしょうか。

主役の北条義時は、父である北条時政に従って源頼朝の挙兵以来平氏討伐を助け、鎌倉幕府の成立に貢献するだけでなく、3代将軍源実朝の死後は姉である北条政子とともに幕政を握り、北条氏専制の基礎を築いています。

ただ、信頼に足る史料の制約もあり、その最期に定説がないことを含めて現在に伝えられる北条義時の事績そのものは限定的であると言えます。

従って、北条義時は上記の(1)から(3)の分類のうち、(2)の「歴史上に名前は留めているものの活動の範囲や後世に伝えられる事績が限られている人物」と(3)の「歴史的な意義と具体的な逸話に乏しい人物」に分類されることが分かります。

今回は北条義時を主役としつつ、序盤は源頼朝との関係が描かれ、中盤は頼朝の死去から2代将軍源頼家の就任と13人の宿老による合議制の確立の過程、そして終盤は北条義時が承久の乱に勝利して事実上の最高権力者として幕府を取り仕切る様子が描かれることになるでしょう。

すなわち、北条義時を中心とする群像劇に仕立て、物語を成立させることが推察されます。

その一方で、参照すべき史料に限りがある中で1年にわたって物語を継続させようとすれば、最終的には断片的な挿話や新しい挿話の創造、さらには「歴史上の人物による家庭劇」という近年の展開[3]を踏襲することになることは容易に予想されます。

ただし、題名を『鎌倉殿の十三人』ではなく『鎌倉殿の13人』と算用数字を用いた点は映画"Ocean's Thirteen"の邦題『オーシャンズ13』を連想させ、単なる群像劇ではなく、より起伏に富んだ作品を目指していることが推察されます。

それだけに、『鎌倉殿の13人』は番組の存在意義そのものが問われかねない「大河ドラマ」という枠組みの生き残りにどのように寄与できるか、これからの放送の内容が注目されます。

[1]NHK大河ドラマ. ビデオリサーチ, 公開日不詳, https://www.videor.co.jp/tvrating/past_tvrating/drama/03/nhk-1.html (2022年1月9日閲覧).

[2]鈴村裕輔, 『麒麟がくる』は「大河ドラマの将来」の瑞兆となるか. 2020年1月19日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/2062ae6afe59f3989191a926202ea467?frame_id=435622 (2022年1月9日閲覧).

[3]鈴村裕輔, 『八重の桜』と「大河ドラマ」の行方. 2013年1月6日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/f2bcb581d6f3b3d43fc888e53073fc51?frame_id=435622 (2022年1月9日閲覧).

<Executive Summary>

Will "The 13 Lords of the Shogun" Be Able to Maintain the Frame of the Taiga Drama? (Yusuke Suzumura)

A new Taiga Drama, Big River Drama, The 13 Lords of the Shogun is starting from the 9th January 2022. Nowadays Taiga Drama is wandering because current dramas are little far from the basic concept of Taiga Drama as TV drama of roman-fleuve.

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