「学業成績」は「留学生への支援」として妥当な基準となり得るか

5月19日(火)、新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済的に困窮する大学の学部学生及び大学院生、短大生、高等専門学校生、日本語学校などに通う学生や留学生などを対象学とする学生支援緊急給付金の創設が閣議決定されました[1]。

学生支援緊急給付金の創設の意義とさらなる支援の必要性については、すでに本欄の指摘するところです[2]。

一方、留学生への支援について、文部科学省が成績上位の3割程度を対象としている点[3]については注意が必要です。

例えば、文部科学省は留学生などが支給対象者となるための基準として、以下の点を挙げています[4]。

1)学業成績が優秀な者であること。具体的には、前年度の成績評価係数が2.30以上であること
2)1か月の出席率が8割以上であること
3)仕送りが平均月額90,000円以下であること(入学料・授業料等は含まない。)
4)在日している扶養者の年収が500万円未満であること

もとより、全ての学生などに一律に給付することを目的としていない制度である以上、何らかの基準を設けることは重要です。

その意味で、「家庭からの多額の仕送りを受けていない」、「生活費・学費に占めるアルバイト収入の割合が高い」といった要件が定めれれていることは適切です。

その一方で、留学生に対してのみ「前年度の成績評価係数」を指標として要件に組み入れることは、妥当性、相当性の点で検討の余地があると言えるでしょう。

たとえ同じ大学であっても所属する学部や学科、さらに専修などが異なれば履修する科目が異なります。そのため、ある学生と別の学生の成績を比較し、一方が優れており他方が劣っているというように比較することが出来ないのは、自明です。

この点について文部科学省は「いずれ母国に帰る留学生が多い中、日本に将来貢献するような有為な人材に限る要件を定めた」と説明したとされます[5]。

しかも、今回の制度は新型コロナウイルス感染症により経済的に困窮した者が対象となります。各人の経済状況と学業成績との間に相関ないし傾向が認められるのでない限り、成績優秀者を対象とすることは制度そのものの趣旨にそぐわない可能性があります。

また、「日本に将来貢献する」という人材が「ような有為な人材」であるか否かは、論理的に照明されうる事項ではなく、希望や期待に過ぎません。

このように考えれば、留学生が給付金の支給対象者となるための基準として成績評価が取り入れられたことは、一面において当局の形式主義を、他面においては「よい留学生は将来日本に貢献する人材」ということを認めたことを示唆します。

果たしてこうした基準が適切なのか、関係者に再考が求められるところです。

[1]最大20万円給付 決定. 日本経済新聞, 2020年5月20日朝刊35面.
[2]鈴村裕輔, 望まれる「困窮学生への給付金」に留まらない「学生支援」. 2020年5月19日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/a5d86bdef780a25e6defbce323245b1c?frame_id=435622 (2020年5月22日閲覧).
[3]留学生への給付「上位3割」. 朝日新聞, 2020年5月21日朝刊27面.
[4]「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』申請の手引き(学生・生徒用). 文部科学省, 2020年5月20日, https://www.mext.go.jp/content/20200520_mxt_gakushi01_000007321_01.pdf (2020年5月22日).
[5]新型コロナ 給付 留学生は上位3割のみ. 中日新聞, 2020年5月21日朝刊2面.

<Executive Summary>
Is Academic Performance an Adequate Criteria for a Scholarship to Students from Overseas Countries? (Yusuke Suzumura)

The Abe Administration decides to create a new scholarship to students including universities, colleges and technical college who are affected by serious economic damage by an outbreak of the COVID-19 on 19th May 2020. There might be a kind of formalism in the scholarship system, since academic performances are applyed as a criteria for only students from overseas countries.

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