『クラシックの迷宮』の放送開始10周年を祝す

本日、NHK FMの番組『クラシックの迷宮』が2013年1月12日(土)の放送開始から10周年目を迎えました。

吉田秀和先生が司会を担当した『名曲のたのしみ』が吉田先生の逝去を受けて2012年12月で放送を終了したことを受けて始まった『クラシックの迷宮』は、司会の片山杜秀先生が毎回趣向を凝らし、独自の視点から様々な作曲家や作品を取り上げる、良質の番組です。

『クラシックの迷宮』の最大の特徴は、「クラシック」の枠組みがいかに広いか、あるいはどこまで拡張できるかを番組を通して証明しているという点です。

すなわち、この番組で取り上げられる作曲家や作品は、いわゆる交響管弦楽や歌劇、宗教音楽などに限らず、映画音楽はもとよりテレビドラマやビデオゲームの音楽、さらに歌謡曲までが含まれます。

これは、いわゆる「クラシック」の音楽を手掛けている作曲者だけに限らず、生涯のうちに管弦楽や器楽の世に送り出さなかった作曲家や作詞家なども積極的に取り上げていることは、「クラシック」という分野が現在も不断に成長していることを念頭に置いた対応と言えるでしょう。

また、様々な分野の作品が紹介されることは、映画やテレビドラマ、あるいはビデオゲームの音楽が交響曲や歌劇に比べて低級もしくは低俗なものなのではなく、むしろ作曲者にとっては表現の場が広がったことを聴取者に伝えます。

もちろん、「クラシック」という言葉を耳にして多くの人たちが思い浮かべるモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスといった作曲家についても、作品だけでなく作曲家本人の魅力に迫るべく、様々な話題を設定するなど、片山先生の構成力の高さが随所に発揮されています。

『名曲の楽しみ』が42年にわたって人々に親しまれたように、「クラシック」の既成の概念にとらわれず、その裾野を広げつつ音楽そのものの魅力に迫ろうとする『クラシックの迷宮』も、末永く聴取者に愛好されることが願われます。

<Executive Summary>
Celebrating Labyrinth of Classical Music's 10th Anniversary (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" reaches the 10th Anniversary on 7th January 2023. On this occasion we celebrate this memorial opportunity and examine a meaning of the programme.

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