【評伝】熊崎勝彦氏--役目を果たして務めを終えたコミッショナー

去る5月13日(金)、前日本野球機構コミッショナーの熊崎勝彦さんが逝去しました。享年80歳でした。

検察官として官界に進んだ熊崎さんは、東京地方検察庁特捜部部長時代に金丸事件、ゼネコン汚職事件、大蔵省接待汚職事件などの捜査に関わったことで知られます。

球界との接点は日本野球機構のコミッショナー顧問と年俸調停委員会委員長を務めたのが始まりで、2014年1月1日に第13代コミッショナーに就任しました。

第7代の下田武三氏から加藤良三氏に至るまで6代続けて官界、特に法務関係の出身者が多く就任していることを考えれば、熊崎さんがコミッショナーとなることは比較的順当な人選でした。

熊崎さんのコミッショナーとしての最大の取り組みは野球賭博問題の解明でした。

すなわち、2015年10月に読売ジャイアンツの投手らが野球賭博に関与していたことが判明すると、11月に3選手を無期失格処分とし、2016年3月には別の選手1人にも1年間の失格処分を科すなど、球界が自らの根幹にかかわる野球賭博問題に比較的迅速に対応できたのは、「球界の番人」としてのコミッショナーとしての役割を十分に果たすものであったと言えるでしょう。

一方、2期4年の任期を終えた熊崎さんの3選がなく、パシフィック・リーグを中心に「ビジネスに精通する人材」を後任とする要望があり、野村証券副社長、産業再生機構社長、東京証券取引所社長などを歴任した斉藤惇氏が選定された事実は、プロ野球が娯楽から産業へと本格的に移行する時期を迎えたことと無縁ではありませんでした。

もとより、熊崎さんのコミッショナー就任と野球賭博問題の発覚とは関係はありません。

それでも、熊崎さんは自らの責務に忠実にあったことで難局を乗り切り、球界に再び安定をもたらした功績は大きなものです。

任期の短さゆえに名前は人々の記憶の中に沈潜するかもしれないものの、熊崎さんの取り組みは球史に書きとどめられるものでありましょう。

改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。

<Executive Summary>
Critical Biography: Ex-Commissioner Katsuhiko Kumazaki, a Man Who Did His Role (Yusuke Suzumura)

Ex-Commissioner of the Japanese Professional Baseball Katsuhiko Kumazaki had passed away at the age of 80 on 13th May 2022. In this occasion we examine Mr. Kumazaki's role and achievements as the Four-Year-Term Commissioner.

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