【追悼文】サトウサンペイさんについて思い出したいくつかのこと

去る7月31日(土)、漫画家のサトウサンペイさんが逝去しました。享年91歳でした。

サトウサンペイさんというと1965年4月1日から1991年9月30日まで8168回にわたって朝日新聞に連載されたマンガ『フジ三太郎』が代表作で、私も毎朝目を通し、独特の諧謔性と素朴ながら親しみやすい画風を楽しんだものです。

その中でも最も印象的なのは、1989年1月7日に天皇の崩御により元号が昭和から平成に改まった翌日の回[1]でした。

平成の元号の由来である「内平かに外成る」(『史伝』)と「地平かに天成る」(『書経』)という一句に基づき、1コマ目で家庭の円満な様子を表現し、2コマ目で主人公のフジ三太郎が「ヒラ社員」から課長に昇進し、3コマ目では武器を廃棄し世界各地の様々な人々が手を取り合いながら連帯する様を描き、4コマ目で太陽、雲、月が微笑み姿が記されています。

4コマ漫画という枠組みの中で新元号をどのように取り上げるのかは読者の誰もが興味を抱くものであり、そうした期待に応えるとともに平成という元号によってもたらされる新しい時代への期待を和やかに描く様は、大変に印象的なものでした。

また、サトウサンペイさんの代表的な著書である『ドタンバのマナー』(新潮社、1982年)とその続編である『スマートな日本人』(新潮社、1986年)は祖父の蔵書の中に収められており、1990年に一部の書籍を譲り受けた際に私が手にすることになりました。

私が最後にサトウサンペイさんの作品を目にしたのは2020年に地下鉄銀座線外苑前駅の目の前にある外苑駅前のバス停に掲示された広告で、久しぶりに闊達な画風に接して何やら嬉しく思ったものです。

改めてご冥福をお祈り申し上げます。

[1]サトウサンペイ, フジ三太郎. 朝日新聞, 1989年1月8日朝刊31面.

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Sampei Sato (Yusuke Suzumura)

Mr. Sampei Sato, a comics artist and an author, had passed away at the age of 91 on 31st July 2021. In this occasion I remember miscellaneous memories of Mr. Sato.

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