『ベストオブクラシック』の特集「ジョルジュ・シフラ変奏曲」について思ったいくつかのこと

8月16日(月)から今日までの5日間、NHK FMでは19時20分から21時10分にかけて『ベストオブクラシック』の特集「ジョルジュ・シフラ変奏曲」が放送されました。

これは、今年11月5日に生誕100年を迎えるハンガリー出身のピアノ奏者ジョルジュ・シフラの録音を紹介する企画で、司会は音楽評論家の増田良介さんとフリーアナウンサーの東涼子さん、客演はピアノ奏者の金子三勇士さんでした。

『ベストオブクラシック』が節目の年などを迎える音楽家を「変奏曲」と題して特集するのは、古くは生誕80周年と没後30周年にちなんだ2012年8月の「グレン・グールド変奏曲」から最近では生誕100周年を迎えたアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリを取り上げた2020年12月の「ミケランジェリ変奏曲」など、番組の恒例の取り組みとなっています。

今回は、「リストの再来」、「リスト以来の超絶技巧」と呼ばれたシフラの演奏を、最も得意としたリストだけでなく、ベートーヴェンやショパンからラフマニノフ、ガーシュイン、バルトーク、ラモーまで幅広く取り上げました。

具体的には、1964年4月の来日公演での華やかさに満ちたリストやショパンの小品の録音や、早逝した息子のジョルジュ・シフラ2世の指揮とニュー・フィルハーモニア管弦楽団の管弦楽による荘厳ささえ漂うラフマニノフのピアノ協奏曲第2番まで、多様な音源が選ばれました。

番組では、増田良介さんが音楽評論家の視点からシフラの音楽史上の位置付けや作品の意味を読み解き、例えばバルトークのピアノ協奏曲第2番を「ハンガリー人にとっては特別な音楽」と指摘すると、ハンガリー人の母を持つ金子三勇士さんが「祖父母から聞いた話」として、シフラが拠点としていた1950年代半ばまでのハンガリーにおいて、共産党政権の下で芸術家として活動することの難しさや音楽家として何ができるのかという点に言及するなど、シフラの全体像を多角的に捉える試みがなされていました。

こうした取り組みを通して、大胆で豪快な演奏と内向的な人柄というシフラの音楽と人となりの一端が鮮やかに描かれたのは、5回連続で一人の音楽家を取り上げる「変奏曲」ならではの成果でした。

それだけに、次はどのような音楽家が特集されるのかと、次なる「変奏曲」が待ち望まれた、今回の放送でした。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of a Radio Programme "Variations of Georges Cziffra" (Yusuke suzumura)

The NHK FM Radio broadcasted a feature programme "Variations of Georges Cziffra" from 16th to 20th August 2021. In this occasion I express miscellaneous impressions of the programme

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