NHK交響楽団の「2022-23シーズン定期公演の詳細発表」に際して思ったいくつかのこと

去る3月25日(金)、NHK交響楽団が2022/2023楽季の定期公演の詳細を公表しました[1]。

今季から首席指揮者にファビオ・ルイージ、名誉指揮者にパーヴォ・ヤルヴィが就任する新体制とA・CプログラムがNHKに戻り、各公演の特徴をより明確にするなど、意欲的な内容となっています。

特に注目すべきは2022年11月11日(土)、12日(日)に開催される第1968回定期公演に登場する予定の井上道義が伊福部昭の『フィンフォニア・タプカーラ』を取り上げることです。

すなわち、2024年12月での引退を表明している井上が、自らの指揮活動の集大成の一環としてこれまで以上に積極的に伊福部の音楽に取り組もうとしているかのようです。

また、来年1月の公演ではロシアによるウクライナへの侵攻に関連してトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督とボリショイ歌劇場の音楽監督兼首席指揮者を辞任したトゥガン・ソヒエフを招聘し、いわゆる「文化的制裁」とは一線を画す態度を示していることも、重要です。

ところで、各公演の特徴は、以下のように示されています[1]。

Aプログラム
N響が国内外の最高峰の指揮者やソリストと多彩な曲目をお贈りするプログラム。オーケストラ音楽の醍醐味を存分に味わえます。またNHKホールのスケールの大きさを生かした、声楽入りの作品や大編成の曲目が並ぶのもAプログラムならではの特色です。
Bプログラム
日本を代表するクラシックの殿堂、サントリーホールでお届けするプログラム。モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ドヴォルザークなど大作曲家の有名曲を中心に、国際的な指揮者やソリストと共にクオリティの高い演奏をお贈りします。
Cプログラム
通常よりコンパクトな60分~80分程度に公演時間を凝縮し、世界的指揮者たちとともにとびきりの名作をリーズナブルな価格でお届けします。今シーズンからは曲間に解説をまじえるなど、より親しみやすいコンサートを目指します。

1990年代末には、本格的な作品を取り上げるAプログラム、挑戦的な選曲を行うBプログラム、そして名曲を中心とするCプログラム、という区分けがなされていたものが、来季から新たな枠組みを与えられたことは、楽団が2026年の創立100周年を見据え、活動の中心である定期公演の一層の活性化を目指していることを推察させます。

その意味でも、2022/2023楽季が所定の内容で行われ、より充実した公演となることが期待されます。

[1]N響定期 リニューアル! 2022-23シーズン定期公演(2022年9月~2023年6月) 詳細発表. NHK交響楽団, 2022年3月25日, https://www.nhkso.or.jp/news/20220325.html (2022年3月27日閲覧).

<Executive Summary>

Miscellaneous Impressions of the NHK Symphony Orchestra's Announcement for the Subscription Concerts 2022-2023 (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra announces the Subscription Concerts 2022-2023 on 25th March 2022. In this occasion I express my miscellaneous impressions of the announcement.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?