外山雄三さんの卒寿を祝して思い出した「『管弦楽のためのラプソディー』の誕生を巡る経緯」

昨日は、作曲家で指揮者の外山雄三さんの誕生日でした。

今年で90歳となった外山さんは現在も音楽家として第一線で活躍しており、日本の現役の指揮者の最年長者として斯界に重きをなしているのは周知の通りです。

私にとって、外山さんはNHK教育テレビの『N響アワー』やNHK FMの『FMシンフォニーコンサート』以来馴染み深い存在であり、指揮者としても1995年3月31日(金)のNHK交響楽団の第1258回定期公演で初めて目にしたのが最初で、これ以降、各団の公演で率直で芯の太い音楽作りに触れてきました。

ところで、外山さんというと思い出されるのが1960年のNHK響の世界一周演奏旅行の際に演奏された『管弦楽のためのラプソディー』の誕生の経緯です。

細野達也さんがNHK響の機関誌『フィルハーモニー』に連載した「あの頃のN響」と、連載をまとめた『ブラボ!あの頃のN響』(三省堂教育開発、1996年)の内容によれば、1960年、NHK響の副理事長であった有馬大五郎が当時ウィーンに留学中であった外山さんに『日本民謡集』(改訂重版、野ばら社、1959年)を渡し、後日世界一周演奏旅行のために「外国人に分かりやすいアンコール・ピースを作曲せよ」と作曲を依頼したのでした[1]。

こうして、1週間ほどで作られ、1960年7月6日に完成したのが『管弦楽のためのラプソディー』であり、最初の練習の際に、指揮を担当した岩城宏之さんの提案により原版の「串本節」と「信濃追分」の間に含まれていた「おてもやん」が削除され、現在の形式にまとめられた逸話[2]も含め、日本を代表する管弦楽作品の誕生までの過程とその後の展開は、実に印象的です。

残念ながらNHK FMの『ブラボー!オーケストラ』の司会は今年3月で降板されたものの、これからも外山さんの健勝と一層の活躍が願われるところです。

[1]細野達也, ブラボ!あの頃のN響. 三省堂教育開発, 1996年, 160-161頁.
[2]同, 161頁.

<Executive Summary>
Celebrating the 90th Birthday of Mr. Yuzo Toyama (Yusuke Suzumura)

The 10th May, 2021 is the 90th Birthday of Mr. Yuzo Toyama, a conductor, born in 1931. In this occasion I remember miscellaneous episodes of Mr. Toyama.

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