「宮沢蔵相や細川首相の事例」から考える「桜問題」における安倍首相の答弁の重要さ

昨日行われた衆議院予算員会において、安倍晋三首相と立憲民主党など野党共同会派が首相が主催する桜を見る会を巡り議論しました。

席上、立憲民主党の辻元清美幹事長代行は、桜を見る会前夜の夕食会会場となったANAインターコンチネンタルホテル東京との間で交わした電子メールの内容を明らかにし、ホテル側から2013年以降のパーティーや宴会に関し「主催者に見積書や明細書を発行しないことはない」との回答があったと指摘しました[1]。

辻元氏の質問に対し、2月4日(火)の衆院予算委員会でホテル側から夕食会の明細書は受け取っていない」と答弁していた安倍首相は、自らの事務所が改めて事実確認したところ、ホテル側から「辻元氏にはあくまで一般論で答えたもので、個別の案件は営業の秘密に関わるため、回答には含まれていない」との説明を受けたと発言しました[1]。

一方、朝日新聞によれば、昨夜、同紙の問い合わせにホテルが回答したところでは、「(首相側と)直接話をした者が『一般論として答えた』と説明したが、例外があったとは答えていない」とし、対応に例外はないとの認識を示しています[2]。

安倍首相と辻元氏の質疑応答はいわゆる水掛け論の域を出ず、ことさら重視すべき問題ではないかのように思われます。

しかし、過去の事例を参照すれば、国会での答弁が矛盾する内容であったり、不正確な場合、致命的な結末を招くこともあります。

例えば、リクルートコスモス株の取引き名義貸し問題で釈明の再々答弁を行い、従来の説明を全面的に訂正した[3]ことで自認した宮沢喜一大蔵大臣や、東京佐川急便からの「1億円借り入れ問題」で国会に提出した領収書の控えや東京佐川急便の貸し付け台帳といった書類の不自然さや不備を野党自民党から指摘され、「返済は明白」という答弁を繰り返したものの[4]国会の空転を招いたことで引責辞任した細川護熙首相などは、国会での答弁に起因する辞任の典型です。

「殷鑑遠からず」の言葉を俟つまでもなく、歴史を知ることは現在の問題に向き合うために重要な手段です。

野党は、宮沢蔵相や細川首相の例があればこそ、「桜問題」について安倍首相への質問を繰り返していると言えます。

また、安倍首相や関係者は、宮沢蔵相や細川首相の例を知悉した上で答弁していることでしょう。

しかしながら、たとえ故意であれ偶然であれ、過去の実例を見逃しているとすればどのようになるでしょうか。

もし、これまでの安倍首相による答弁が弥縫的であれば、先行きを楽観視することは出来ません。

その意味でも、事柄の真相を明らかにすることは重要なのです。

[1]野党「ホテルは明細書」首相「受け取ってない」. 日本経済新聞, 2020年2月18日朝刊4面.
[2]明細書、主催者に未発行「ない」. 朝日新聞, 2020年2月18日朝刊3面.
[3]宮沢蔵相、株譲渡で再釈明. 読売新聞, 1988年12月1日夕刊1面.
[4]1億円借金・NTT株問題 細川首相「問題ない」強調. 読売新聞, 1994年4月1日朝刊2面.

<Executive Summary>
Why Does Prime Minister Shinzo Abe Have to Make Consistent Answers at the Diet? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Shinzo Abe's answers on the "Sakura Party Issue" seem to be inconsistent. It is very remarkable for Prime Minister Abe to make consistent answer to the questions at the Diet, since some ministers including Former Financial Minister Kiichi Miyazawa and Former Prime Minister Morihiro Hosokawa had to resign their position with their inconsistent answers.

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