『クラシックの迷宮』が教える映画からゲームへと広がる「クラシックの世界」

去る7月2日(土)に放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は、「映画とアニメと交響組曲~スター・ウォーズからゴジラまで~」と題して映画と管弦楽の関係が検討されました。

今回の特集の中心となったのはジョン・ウィリアムズで、1977年のロンドン交響楽団による映画『スター・ウォーズ』の音楽から出発し、今年になってベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団といった世界最高峰の楽団が相次いでウィリアムズの作品を取り上げるようになるまでの、45年間の社会における「クラシックの受容の変化」が解き明かされました。

編成が小さくなりがちであった映画音楽の分野に大編成の楽団による演奏を復活させ、現在に至る劇伴の基礎を築いたウィリアムズに焦点を当てるとともに、作品を離れて一つの管弦楽作品として独立する契機をもたらした交響組曲に着目したこと、さらに映画だけでなくテレビアニメや特撮の分野においても劇伴から出発して交響組曲となり、より洗練された構成へとまとめ上げられる経緯が紹介されたのは、いかにも片山杜秀先生らしい趣向の凝らされたものでした。

しかも、「交響組曲」といっても内実は様々で、主題歌を編曲する作曲家の手腕や構成の内容に巧拙があったことが、実際に取り上げられた作品と「出来栄えはともかく、映画からアニメ、ゲームへと広がる様子」という片山先生の指摘を重ね合わせことで明らかになるというのも、心憎いものでした。

それだけに、伊福部昭のSF交響ファンタジー第1番が番組で紹介された日本の作曲家の作品の中で管弦楽作品として十分な聞き応えを備えていたのは、伊福部が器楽・管弦楽の作曲家として出発したという経歴が少なからず作用していたことを推察させるものであったと言えるでしょう。

いずれにせよ、20世紀に入り作曲家にとって活動の場がそれまでの交響管弦楽や歌劇などから映画音楽、さらにテレビ、ゲームと急速に拡大し、それに合わせて様々な新しい技法や構成が生み出されたことそのものが「クラシック音楽」の新たな展開であることを聴取者に改めて実感させたという意味において、今回の『クラシックの迷宮』も教育的意義の高いものでありました。

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Shows an Expansion of Categories of "Classical Music" (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured film, TV animation and game music on 2nd July 2022. It might be a meaningful opportunity for us to understand an expansion of categories of "classical music" with some films and animations.

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