NHK交響楽団2021年6月サントリーホール公演

昨夜は、NHK FMでNHK交響楽団の2021年6月サントリーホール公演を聴取しました。

今回は、前半にペルトの『スンマ』の弦楽合奏版とシベリウスのヴァイオリン協奏曲、後半にニルセンの交響曲第4番『不滅』が取り上げられました。ヴァイオリン独奏は青木尚佳、指揮はパーヴォ・ヤルヴィでした。

新型コロナウイルス感染症の感染の拡大により日本と諸外国の間での人の往来が制約されたこともあり、昨年2月の欧州演奏旅行以来1年4か月ぶりの共演となったヤルヴィが、第1曲目に母国エストニアのアルヴォ・ペルトを用意したのは、一面において長期の不在で生じたかもしれない空隙を埋めるためでありましょう。

その一方で、ヤルヴィが首席指揮者に就任してから楽団の新たな演奏曲目となった作品を携えることで原点に回帰しつつ公演に臨もうという積極的な意図の表れでもありました。

結果として、作品に正対して譜面の細部まで読み込み、解きほぐした旋律を一つの音楽へと組み立てるヤルヴィの手腕がいかんなく発揮され、過不足のない演奏が仕立て上げられました。

また、こうしたある種の即物的とも現代的ともいえるヤルヴィの特質が遺憾なく発揮されたのはシベリウスで、青木の正確でゆとりさえ感じさせる運弓と合わさることで、余情を徹底して排することでかえって譜面の合間に埋め込まれた抒情性が立ち現れる演奏となりました。

これに対し、後半のニルセンは、「音楽は生命であり、生命と同じく『滅ぼし得ざるもの』である」というニルセンの言葉を象徴するかのように、一貫して集約力に溢れ、最後まで聞き手の注意を逸らさないものでした。

特に終盤の金管楽器の吹奏はヤルヴィとNHK響の組み合わせの一つの頂点をなすもので、ともすれば散漫になりがちな箇所を丹念に彫琢し、印象的な幕切れへと音楽を導きました。

ヤルヴィの首席指揮者としての任期は2021/2022楽季で満了となります。

もちろん、その後も首席客演指揮者や名誉指揮者といった新しい称号とともに、両者の関係は新たな段階を迎えることでしょう。

しかし、従来のように両者が共演する機会は減らざるを得ません。

それだけに、今回の公演の持つ意味は大きく、定期公演に準じる各月の公演の掉尾を飾るにふさわしいものであったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra June Concert at the Suntory Hall (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the June Concert at the Suntory Hall and broadcasted via NHK FM on 16th June 2021. In this time they performed Pärt's Summa (String Orchestra Version), Sibelius' Viloin Concerto, and Nielsen's 4th symphony. Solo violin was Naoka Aoki and conductor was Paavo Järvi.

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