大谷翔平選手の「アジア出身選手初の大リーグ本塁打王」を讃える

現地時間の10月1日(日)、大リーグの2023年のレギュラーシーズンがすべて終了し、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が44本塁打を記録してアメリカン・リーグの本塁打王となりました。

アジア各国・地域出身の選手が本塁打王となるのは大リーグ史上大谷選手が初めてです。

これまでアジア出身の選手は他の国や地域の出身の選手に比べて打撃術では遜色がないものの長打力の点で劣るというのが、球界での通年でした。

確かに、アジア出身の選手の中で唯一3000本安打を記録しているイチロー選手も、日本時代はプロ野球に9年間在籍して二桁本塁打を7回記録したものの、大リーグでの19年間では3回のみでした。

また、渡米時にプロ野球で最高の長距離打者と考えられていた松井秀喜選手も、2003年から2012年までの10年間で記録した最多本塁打は2004年の31本であり、長距離打者の名に値する40本塁打も、真の長距離打者と考えられている50本塁打も達成することはありませんでした。

一方、2021年にはアジア出身の選手として歴代最多の46本塁打を記録している大谷選手は、それだけで現在の大リーグでも屈指の長距離打者であることが分かるとともに、本塁打王になる日も遠くないと考えられていました。

それだけに、今回本塁打王となったことは、決して意外な出来事ではなかったと言えるでしょう。

それとともに、これまでアジア出身者のうち、各国や地域のプロ球界を経験した選手がいずれも大リーグで単年もしくは通算での本塁打数を減らす中で、ただ一人渡米前よりも本塁打の数を増やしているのが大谷選手であるという点は見逃せません。

すなわち、スタットキャストなどの各種設備や機器の導入により、効果的に本塁打を放つための打撃方法が一般化した2014年から2015年にかけての大リーグの根本的ともいえる変化が、大谷選手の成績に重大な影響を与えたのです。

もちろん、どれほど優れた理論があるとしても、その理論を実践できるだけの身体的な能力を備えていなければ、本塁打であれ単打であれ、顕著な成績を残すことは出来ません。

その意味で、大谷選手は野球選手として優れた能力を持つとともに、球界の新たな潮流を積極的に摂取したことで、今回の栄冠を手にすることが出来たと言えるのです。

今季の成績からは、大谷選手はアメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)となることはほぼ間違いないところであり、2021年に続く2度目の受賞は、過去のいかなるアジア出身の選手もなし得なかった偉業となります。

このように考えれば、今季の大谷選手は、文字通り球史に残る活躍を残し、また、一人の野球選手として新たな歴史を切り拓いたことが分かります。

残念ながら右ひじの故障による手術のため、来季は投手としての出場はなく、打者に専念することが想定されています。

しかも、術後の状況によっては、打者としても本来の打撃力を発揮することが難しくなるかも知れません。

それでも、2023年の活躍は来年以降も野球選手としての大谷翔平選手のさらなる活躍を期待させるものであり、今回の本塁打王は、その輝かしい勲功を考える上で欠かすことのできない成果となったのです。

<Executive Summary>
Mr. Shohei Ohtani and His Historical Achievement as the Home Run King of 2023 (Yusuke Suzumura)

Mr. Shohei Ohtani of the Los Angeles Angels becomes the 1st Asian Player who becomes the Home Run King of 2023. On this occasion, we examine the meaning of this historical achievement and Mr. Ohtani's efforts.

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