NHK交響楽団2021年5月サントリーホール公演

昨夜は、19時から21時まで、NHK FMでNHK交響楽団の2021年5月サントリーホール公演を聴取しました。

今回は前半にチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番から第2楽章アンダンテ・カンタービレ、サン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番、後半に尾高惇忠の交響曲~時の彼方へ~が演奏されました。ヴァイオリン独奏は白井圭、指揮は広上淳一でした。

この日の公演で最も興味深い選曲であったのは尾高で、今年2月に逝去した尾高の追善を門下の広上が行う演奏となりました。

尾高の作品そのものは、チャイコフスキーやストラヴィンスキーの風合いを織り交ぜつつ情感豊かな仕上がりとなっており、標題音楽的な傾向を示しつつ交響曲としての完成度の高さを備えており、NHK響の腰の据わった演奏と合わせて印象的な一曲となりました。

NHK響のゲスト・コンサートマスターでもある白井の独奏によるサン・サーンスは、協奏曲の伴奏にかけては当代屈指の広上の手腕が発揮され、ヴァイオリンとオーケストラの位置取りの絶妙さは後味の良いものとなりました。

第1曲目のマカリスターの編曲によるチャイコフスキーは華やかさよりも緩急の対比の鮮やかさがより強調された演奏となっており、チャイコフスキーの響きを残す尾高の交響曲と重ねて聞くことで、選曲の妙味をより一層堪能することができました。

教育者として後進の育成に尽力した尾高の作曲家としての取り組みが定期公演に準じる各月の公演で紹介されたことは、日本人の作曲家の作品の普及という点でも意義深い試みであったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra May Concert at the Suntory Hall (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the May Concert at the Suntory Hall and broadcasted via NHK FM on 26th May 2021. In this time they performed Andante cantabile from Tchaikovsky's String Quartet No. 1, Saint-Saëns' Violin Concerto No. 3, and Otaka 's Symphony "Au-delà du Temps". Solo violin was Kei Shirai and conductor was Junichi Hirokami.

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