「オリパラ関係者」は「科学的知見」をどこまで活かせるか

去る5月25日(火)、米国の医学専門雑誌The New England Journal of Medicineの電子版に、アニー・スパロー博士(マウントサイナイ医科大学)らの論文"Protecting Olympic Participants from Covid-19 — The Urgent Need for a Risk-Management Approach"が掲載されました[1]。

本論文は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中で、選手や大会関係者だけでなく一般の観客を含む東京オリンピック及びパラリンピックの参加者全体をどのようにして保護するかを危機管理の観点から検討しています。

「原則」、「最適な実践方法」、「IOCのプレーブックの基準」を対比させたり、2016年のリオ大会でのジカ熱問題などにも言及しつつ、「コロナ下でのオリパラ」のあり方を模索するこの研究は、ある意味で探索的な取り組みと言えるでしょう。

もとより、今回は原著論文ではなく展望(Perspecitve)欄に掲載されたことからも、論考の信頼性や妥当性は後日の検証に委ねることが必要であると言えます。また、わずか1報の論文のために8年をかけて開催に取り組んできた大会のあり方そのものを変えることは不適当であるという見解もあることでしょう。

その一方で、The New England Journal of Medicineのように世界の医学界に影響力を持つ雑誌に、東京オリンピックとパラリンピックが持つ公衆衛生面での欠点や不足な要素を指摘する論考が掲載されることの意味は決して小さくありません。

それだけに、大会組織委員会や東京都、日本政府だけでなく、大会の主宰者である国際オリンピック委員会もこうした専門家の様々な見解を前にして拱手傍観せず、足らざるを補い、過てるを矯める真摯さが求められると言えるのです。

[1]Annie K. Sparrow, Lisa M. Brosseau, Robert J. Harrison, et al. Protecting Olympic Participants from Covid-19 — The Urgent Need for a Risk-Management Approach. N Engl J Med, 2021: 1-4.

<Executive Summary>
How Can the IOC and Other Relatives to Correct Their Defects with Scientific Viewpoints? (Yusuke Suzumura)

An article entitled "Protecting Olympic Participants from Covid-19 — The Urgent Need for a Risk-Management Approach" was published on The New England Journal of Medicine on 25th May 2021. In this occasion we require the International Olympic Committee and other relatives to meditate their activities and correct defects with such scientific viewpoints.

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