第72回紅白歌合戦が直面するテレビ番組を取り巻く環境の変化

2021年12月31日(金)に放送された第72回NHK紅白歌合戦は、関東地区における総合テレビの平均視聴率が、第1部で31.5%、第2部が34.3%でした[1]。

従来のテレビ番組だけでなく、Netflixなどの動画配信サービスが普及する中で、人々の視聴のあり方の多様化が進んでいます。

従って、第2部の視聴率が1989年に現行の2部制が導入されて以降では最低となったことは、一面ではこうした視聴形態の多様化は紅白歌合戦も例外ではないことを明らかにしたと言えるでしょう。

それとともに、2部制という形式を含め、制作者側の意図と視聴者の希望とが乖離している、あるいは嗜好の幅が広がる中で出場者の選択や演出のあり方がどこまで需要を満たしているかという、番組制作の根本的な問題を示していることが推察されます。

また、演歌歌手の出番にアイドル歌手などを共演させたり特別出演の団体を起用するといった演出は、改善すべき事項が依然として放置されていることを示すとともに、番組の中盤で進行とは関係のない演出を行うことは制作者側の「視聴率稼ぎ」の思惑を反映しており、視聴者の寒心に堪えないものでした。

その一方で、藤井風がテレビの音楽番組で初めて演奏を披露したり、全体最後に歌唱したMISIAのピアノ伴奏を務めるといった場面は、番組が持つ底力を見せました。

あるいは、東京都交響楽団が「紅白初出場」を果たしたり、松平健が『マツケンサンバII』やPerfumeが『ポリゴンウェイヴ』を歌唱したことは、過去4年にわたり番組が喧伝してきた東京オリンピックについて、番組として一つの段落を付けるための措置でした。

このように、今回、紅白歌合戦はテレビ番組を取り巻く環境の変化そのものにいかにして対応するかという根本的な課題に直面したと言えるでしょう。

[1]NHK総合「紅白歌合戦」. ビデオリサーチ, 2022年1月2日, https://www.videor.co.jp/tvrating/past_tvrating/music/02/nhk-2.html (2022年1月3日閲覧).

<Executive Summary>
The 72nd NHK Kohaku Utagassen Faced Fundamental Changes for the TV Programmes (Yusuke Suzumura)

The 72nd NHK Kohaku Utagassen, Red and White Singing Contest, was held on 31st December 2021. They showed they were facing fundamental changes for the TV programmes.


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