衝撃的な出来事を適切に理解するために求められるのはいかなる態度か--芦原妃名子さんの訃報を受けて

昨日、漫画家の芦原妃名子さんが栃木県内で死亡しているのが見つかり、周囲の状況から自ら命を絶ったとみられます[1]。

芦原さんは2023年10月から12月に日本テレビでドラマ化された漫画『セクシー田中さん』の原作者で、脚本や登場人物の設定を巡り日本テレビ局側と見解の相違があったとされます[1]。

今回の出来事と番組の内容に関する問題が直接関係するか否かは、今後警察当局の捜査などで明らかになることでしょう。それだけに、われわれには、予断を排して事態の推移を注視することが不可欠です。

それとともに、今後この出来事を考える上で、われわれは以下の3つの点に注意する必要があります。

すなわち、第一は、人は「暇だから」「面白そうだから」といった理由から自ら命を絶つことはなく、その背後にそうするよりほかに選択肢がないという事情が存するという点です。

もちろん、そのような事情が他の人からすれば些細な出来事かも知れないものの、当人にとって抜き差しならぬ問題であるという点は見逃せません。

第二の点は、衝撃的な出来事に接すると人は表面的な事柄に注意を惹きつけられるものの、人目を引く要素のみを見つめることは問題の解決には繋がらないということです。

あらゆる事柄には表面に現れる部分の背後に、目立たないながらも事柄の核心を形成する要素があるのであり、そうした部分に視線を向けなければ、問題の全容を適切に理解することは難しくなります。

また、第三の視点として、何事であれ何かを、あるいは誰かを責め立てれば問題が解決するというものではないことにも、あらためて注意を払いたいものです。

何故なら、そうした態度は新たな悲劇をもたらすことはあっても、状況をよりよい方向に転換させることはまれだからです。

われわれがある話題に対して注意と関心を持続させることは決して容易ではなく、どれほど大いに注目される事項であってもいずれは記憶の中に沈潜することは珍しくないものです。

それだけに、一時の喧騒の背後にいかなる問題があるのかを見極めるという態度がより重要となります。

そして、そのようなあり方が、自ら最も重たい選択を行った芦原妃名子さんへの実のある追悼となるのです。

[1]芦原妃名子さん栃木県内で死亡. 日本経済新聞, 2024年1月30日夕刊11面.

<Executive Summary>
What Are Important Attitudes for Us to Understand the Meaning of a Devastating Event? (Yusuke Suzumura)

Ms Hinako Ashihara, a manga author, had passed away at the age of 50 on 29th January 2024. On this occasion, we examine important attitude for us to understand a devastating event like the death of Ms Ashihara, who ended her life.

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