ハグハグ共和国の第35回公演「天穹の雫」より『ひとつぶ ひとひら ひとかけら』

去る10月10日(日)、17時から18時25分までハグハグ共和国の第35回公演「天穹の雫」から『ひとつぶ ひとひら ひとかけら』(作・演出:久光真央)を、会場である萬劇場からの実況配信により鑑賞しました。

平凡で退屈な毎日を送っていると思っていた弥生(ちあき)が、アルバイトの面接で偶然一緒になった、毎日を楽しそうに過ごしているように見える玄(中村和之)とともに「交通量調査」の業務に従事したことから起きる、人間の生と死を巡る物語が『ひとつぶ ひとひら ひとかけら』です。

現代では赤川次郎の『夢から醒めた夢』、古くは能の『隅田川』、あるいはシェークスピアの『ハムレット』などを参照するまでもなく、演劇にとって生と死が主要な題材となるのは、一面においては人間が死すべき存在であるからであり、他面では一度死んだ人間が蘇るという事例を目の当たりにすることが難しいという理由によるのでしょう。

その様に考えれば、本作が退屈な毎日というごく当たり前の光景を描きつつ、その背後にある非日常的な生のあり様に迫るのは、劇作の基本に沿うものです。

また、弥生と玄の体験する不思議な出来事の話が玄を巡る物語へと展開し、最後は弥生に新たな一歩を踏み出す機会をもたらすという構造も、見通しのよさと説得力を持ちます。

ただ、どれほど構成や展開のよい物語であっても、作品の魅力を決めるのは一人ひとりの演者の演技であり、それぞれの登場人物の造形の巧拙です。

このように考えれば、主要な役どころだけでなく周囲を固める出演者まで鍛錬の行き届いた演技や動きをみせたことは、それだけ物語の集約力を高めるとともに観る者の注意を惹きつけて離さないために大きく貢献したと言えるでしょう。

躍動感のある物語の展開を忠実に追うことで、画面が頻繁に切り替わることになったのは今後の改善が期待される点でした。

それでも、劇場の限られた舞台を立体的に活用することで作品に奥行きと広がりをもたらしたことは高く評価されるべきで、今後もさらに意欲的で挑戦的な活動が期待されるところです。

<Executive Summary>
Stage Review: The Republic of HUG HUG the 35th Performance "Hitotsubu Hitohira Hitokakera" (Yusuke Suzumura)

The Republic of HUG HUG's 35th Performance "Hitotsubu Hitohira Hitokakera" was held on 10th October 2021.


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