「文通費問題」の何が問題か

現在、国会では今年10月31日(日)に行われた第49回衆議院議員総選挙で当選した新人と元職の議員について、10月分の文書通信交通滞在費(文通費)の返還や法律の改正を目指す動きが活発になっています[1]。

これは、現行の国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(国会議員歳費法)では1日でも在職した議員には月額の文通費100万円が全額支給されることについて日本維新の会が疑問を呈し、文通費を寄付する方針を示したことを契機として起きたものです。

確かに、感覚は様々ですから、在職期間が1日の新人議員や元職議員が文通費を全額受け取ることに違和感を覚える人がいるとしても不思議ではありません。

また、「永田町の常識は世間とかけ離れている」という指摘[2]にも何らかの真実が含まれているかも知れません。

その一方で、文通費が国会議員が政治活動を円滑に行うことを目的として支給されるものであることを考えれば、現在の各党の動きは必ずしも妥当とは言えません。

すなわち、もし文通費の支給がなければ、新人議員や元職議員が選出直後から速やかに政治活動を行うためには、各政党が相応の資金を提供するか、各人が十分な資金を手元に蓄えていなければならないことになります。

この場合、資金力のない政党や議員は十分な政治活動を行うことが難しくなりかねず国民の負託を受けて国政に臨む各議員が行動を制約を受けかねません。

このように考えれば、「世間の常識」と「永田町の常識」との乖離を防ぐことも重要ながら、制度が作られた趣旨を改めて確認し、改めるべきは変えつつ維持すべきものは保つという態度が必要でしょう。

「身を切る改革」といった耳心地のよい言葉に惑わされて、特定の政党の支持者に向けた実績作りのために国会議員の活動が制限されるということがあってはならないのです。

[1]文通費問題、与野党協議へ. 日本経済新聞, 2021年11月17日朝刊4面.
[2]維新の新人議員文通費全額寄付. 日本経済新聞, 2021年11月16日朝刊4面.

<Executive Summary>
Is a Monthly Transportation and Communication Allowance a True Problem for the Lawmakers? (Yusuke Suzumura)

In these days giving a Monthly Transportation and Communication Allowance for lawmakers who serve just one day after the 49th General Election conducted 31st October 2021 is considered as inadequate custom and they discuss to revise concerning law. It seems important idea, however it is not a true problem for the lawmakers. Since they compete only changing the law but they do not pay their attention to the meaning of the law.


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