佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学への進学が日本の学生スポーツ界に与える副次的効果は何か

花巻東高等学校で野球部に所属する佐々木麟太郎選手が米国のスタンフォード大学に進学することについて、私の見解は日刊ゲンダイの関連する記事にまとめられているとともに、本欄でもご紹介している通りです[1]-[4]。

また、こうした内容に基づき、テレビ番組などでも佐々木選手の進学の意義などについてお話しています。

一連のお話の中で特に私が取材される方に強調する点が、スタンフォード大学も所属する全米大学体育協会(NCAA)はスポーツと学業の両立を標榜し、所属するディビジョンごとに学生に所定のGPAを満たすことを求めており、日本においてもNCAAを手本とした一般財団法人大学スポーツ協会(UNIAVAS)が2019年に発足したことです。

UNIVASについては、既存の大学運動部と競技連盟、あるいはUNIVASと競技連盟の関係を見直すことなく、既得権が温存されたままとなっており、大学スポーツを抜本的に変革するというUNIVASの設立の目的の実現を難しくしているという点については、本欄がかねてより指摘するところです[5]。

あるいは、日本には大学および短期大学を合わせて約800校があるにもかかわらず、2023年12月時点でUNIVASの加盟校が221校であること[6]は、その取り組みが発展途上にあることを示します。

しかしながら、学業と競技活動を両立できる学生の育成というUNIVASの理念は加盟大学にとって運動部に所属する学生の学修状況に変化をもたらしていますし、未加盟の大学などにとってもUNIVASの方針は参照すべき手本の一つとなっています。

このような状況は学生スポーツのあり方を考える上で重要ながら、大学スポーツの関係者以外には浸透していませんでした。

従って、今回の佐々木選手のスタンフォード大学の進学はNCAAの存在が日本において少しでも知られることになり、結果としてNCAAを手本としたUNIVASの名前が取り上げられる機会が増えるなら、その意義は大きなものです。

それだけに、佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学への進学は、一人の高校生としての佐々木選手の進路の選択に関わるだけでなく、日本の学生スポーツ界にとっても副次的ではあっても重要な意味を持つと言えるでしょう。

[1]米スタンフォード大進学の麟太郎は「学費」だけでも年間1240万円…そんな大金払えるの?. 日刊ゲンダイ, 2024年2月14日, https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/336214 (2024年2月27日閲覧).
[2]「野球部入部時期は?」「学費は?」…麟太郎が進学 米スタンフォード大をQ&Aで徹底解説【前編】. 日刊ゲンダイ, 2024年2月15日, https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/336216 (2024年2月27日閲覧).
[3]「学業は?」「裏口入学は?」…麟太郎が進学 米スタンフォード大をQ&Aで徹底解説【後編】. 日刊ゲンダイ, 2024年2月15日, https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/336218 (2024年2月27日閲覧).
[4]鈴村裕輔, 期待される佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学における学業とスポーツでの活躍. 2024年2月15日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/2aa3598f3b2a4aa5c57d46d5ae27541c?frame_id=435622 (2024年2月27日閲覧).
[5]鈴村裕輔, 三度時期尚早なUNIVASの設立を批判する. 2019年2月28日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/7d5e360e63147ad371a3a46adb17a84f?frame_id=435622 (2024年2月27日閲覧).
[6]加盟団体. 一般財団法人大学スポーツ協会, 2023年12月20日, https://univas.jp/meaning/group/ (2024年2月27日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaningful Second Order Effect of Mr Rintaro Sasaki's Enrollment in Stanford University? (Yusuke Suzumura)


Mr Rintaro Sasaki of Hanamaki Higashi High School will be enrolled in Stanford University on 13th February 2024. On this occasion, we examine the meaningful second order effect for university student's sports in Japan.

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