チャールズ3世陛下の戴冠式について思ったいくつかのこと

昨日、英国王チャールズ3世陛下の戴冠式が行われました。

エリザベス2世陛下の崩御に伴う新王の即位により英国として70年ぶりに行われた戴冠式は、性別や宗教、あるいは人種の違いを乗り越え、国民と子国家の統合の象徴となろうとするチャールズ3世陛下の意志を示すかのように、女性聖職者が新約聖書の一部を読み上げるほか、イスラム教やユダヤ教の代表が腕輪や指輪などの宝器を新王陛下に手渡しました[1]。

また、戴冠式に不可欠な音楽についてみれば、多様性の確保という観点がより一層明瞭に認められます。

すなわち、これまで男性の作曲家が手がけてきた式典音楽の作曲を女性のデビー・ワイズマンが担当し、ポール・ミーラーが戴冠式のために献呈した『キリエ』を歌唱したのは、ウェールズ出身の歌手として初となるブリン・ターフェルでした。

ところで、今回の戴冠式については、日本でも各種の報道が行われ、当日はCS日本で実況中継が行われました。

昨年6月のエリザベス2世陛下の在位70周年記念式典や同じく9月の国葬もNHKの衛星第一放送で実況中継されていますので、今回の放送も日本の皇室と英国の王室の密接な関係を考えれば当然のことのように思われるかもしれません。

しかし、例えばやはりかかわりの深いオランダ王室おいて、2013年4月30日に国王ウィレム=アレクサンダー陛下が即位式を挙行された際に、日本国内で実況中継がなされることはなく、報道も形式的なものでした。

その意味において、日本における英国王室に対する親近感は他国の王室に比べてより高いものであることが分かります。

こうした点を含め、今回の戴冠式は英国民にとってだけでなく、日本の人々にとっても、世紀の大典と呼ぶにふさわしいものであったと言えるでしょう。

[1]英チャールズ国王の戴冠式. 日本経済新聞, 2023年5月2日朝刊11面.

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of the Coronation Ceremony for King Charles III (Yusuke Suzumura)

The Coronation Ceremony for King Charles III of the United Kindgom was held on 6th May 2023 and the king crowned. On this occasion, I express miscellaneous impressions of the remarkable ceremony.

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