【追悼文】ユーリ・テミルカーノフさんについて思い出すいくつかのこと

去る11月2日(木)、指揮者のユーリ・テミルカーノフさんが逝去しました。享年84歳でした。

旧ソ連時代から実践を重ね、エフゲニー・ムラヴィンスキーの後任として1988年からレニングラード・フィルハーモニー交響楽団、すなわち現在のサンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、国際的な名声を博したことは周知の通りです。

サンクトペテルブルク管の前任の音楽監督であったムラヴィンスキーがその厳しい練習によって同団の技量を飛躍的に向上させるとともに、「将軍」という綽名を与えられ、畏怖の念をもって受け入れられたことに比べれば、テミルカーノフさんはより開明的な形で楽団の発展に寄与したと言えるでしょう。

このほか、英国のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団や米国のボルティモア管弦楽団でも顕著な実績を残したことも、われわれの記憶に新しいところです。

また、日本においてはサンクトペテルブルク管のほか、読売日本交響楽団との共演が印象深く、私も2000年5月23日(火)の第383回定期演奏会でストラヴィンスキーのバレエ音楽『ペトルーシュカ』とチャイコフスキーの交響曲第4番を聞いた際には、それまで録音を通してのみであったテミルカーノフさんの音楽作りの強靭さとしなやかさを同時に体験するとともに、終始端然とした様子の、ある種の気高さも興味深く思われたものでした。

最後にテミルカーノフさんの指揮を直接目にしたのは、2010年5月11日(火)の読売日響の第493回定期演奏会でした。

ショスタコーヴィチの交響曲第7番が演奏された公演では、あたかも会場であるサントリーホールの全ての視線がその巧みに操られる指揮棒の軌跡に集中していたかのような光景が、今でも鮮やかに思いこされます。

ソ連からロシアへという大きな時代の変化の中にありつつ音楽家として一層の飛躍を遂げて今日に至ったテミルカーノフさんのご冥福を改めてお祈り申し上げます。

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Yuri Temirkanov (Yusuke Suzumura)

Mr. Yuri Temirkanov, a cundoctor and the Ex-Music Director for the Saint Petersburg Philharmonic, had passed away at the age of 84 on 2nd November 2023. On this occasion, I remember my msicellaneous memoris of Mr. Temirkanov.

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