球団経営者たちも共和党への深入りをためらう

2022年11月21日(月)、日刊ゲンダイの2022年11月22日号27面に連載「メジャーリーグ通信」の第127回「球団経営者たちも共和党への深入りをためらう」が掲載されました[1]。

今回は、2022年11月に行われた米国中間選挙の結果が、共和党支持者が多い大リーグの球団経営者の行動にどのような影響を与えるかを検討しました。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。第127回


球団経営者たちも共和党への深入りをためらう
鈴村裕輔

「赤い波と青い防波堤のどちらが勝つか」と注目された米国の中間選挙は、当初は圧勝も予想された共和党が伸び悩み、上下両院とも劣勢が伝えられた民主党が下院で過半数を下回ったものの上院では多数党の座を維持した。

共和党を象徴する色は赤であり、青は民主党の色だから、今回の中間選挙では「赤い波」を「青い防波堤」が食い止めたことになる。

今回の結果を考える際に重要な点の一つは、現職の強さが示されたことだ。

2022年12月6日に決選投票が行われたジョージア州で、民主党の現職であるジョン・ワーノックが勝利した。これにより、上院民主党は1918年以来初めて出馬した現職が全員当選したことになる。

また、中間選挙に合わせて36の州で行われた知事選挙でも、28人の現職候補のうち27人が当選している。

一方、共和党ではトランプが推薦した候補の当選率は9割を超えたものの、ペンシルベニアやアリゾナなど上院の激戦州では、無党派層の支持を固めきれなかったトランプ派の候補者が落選している。

ここから、米国の有権者が、2020年の大統領選挙の結果を依然として認めず、「選挙が盗まれた」と主張し続けるトランプに対して批判的であり、中間選挙の結果にも影響を与えたことが分かる。

事情は、球団経営者の4人に3人が共和党を支持し、選手の間では民主党への支持が根強い大リーグにおいても同じである。

経営者たちの多くが共和党を支持するのはなぜか。もちろん共和党員の場合もあるだろう。また、カブスを所有するリケッツ家のように、「将来の共和党の大統領候補」と目されるネブラスカ州知事のピート・リケッツを抱える場合は、共和党との関係は密接となる。

何より大企業の経営者や投資家たちが名を球団の運営に携わる球界にとって、大資本や金融機関への規制の強化に意欲的な民主党よりも優遇策を講じる共和党の方が好ましい。

だが、急進派のうちバーニー・サンダースは政権に参画せず、カマラ・ハリスも副大統領となってから存在感が急速に薄れるなど、発足当時懸念されていたバイデン政権の左派色の強さは、現時点で問題視されていない。

むしろ、民主党保守派のバイデンの存在を反映して中道寄りの政策が行われている。

こうなると、政策の一貫性と実行力に疑問符の付くトランプが共和党の主導権を握ることは、極端ともいえる主張をする人物たちを遠ざけて安定した政権運営を目指すバイデン政権に比べて、大リーグの経営者たちにとって必ずしも好ましい状況ではない。

過激なトランプ派がいる限り、大リーグの球団経営者たちは共和党を支持しても、深入りは慎重に避けることになるのである。


[1]鈴村裕輔, 球団経営者たちも共和党への深入りをためらう. 日刊ゲンダイ, 2022年11月22日号27面.

<Executive Summary>
Mid-Term Elections Is an Important Opporutnity for the MLB Owners' to Prevent from Supporting the OGP Excessively (Yusuke Suzumura)

My article titled "Mid-Term Elections Is an Important Opporutnity for the MLB Owners' to Prevent from Supporting the OGP Excessively" was run at The Nikkan Gendai on 21st November 2022. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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