NHK交響楽団第1986回定期公演

去る6月10日(土)、NHKホールにおいてNHK交響楽団の第1986回定期公演が行われ、6月15日(木)にNHK FMで実況録音が放送されました。

今回は、前半にプロコフィエフの交響組曲『3つのオレンジへの恋』とピアノ協奏曲第2番、後半に日本初演となるカゼッラの歌劇『蛇女』からの交響的断章が取り上げられました。ピアノ独奏はベフゾド・アブドゥライモフ、指揮はジャナンドレア・ノセダでした。

聞き手から広く親しまれているプロコフィエフの中でも、代表的な作品と言える『3つのオレンジへの恋』とピアノ協奏曲第2番に、新鮮な響きを持つカゼッラを組み合わせるところに選曲の妙を堪能できたこの日の公演は、アブドゥライモフの独奏によるピアノ協奏曲が優れた出来栄えとなっていました。

特に、その正確な指捌きは作品の持つ緊迫感とその背後から顔を表す滑稽さとをよく表現していました。

本来であればアレクサンドル・トラーゼが独奏を務めるはずであったものの、昨年5月10日に他界したため、新たにアブドゥライモフを招いた関係者の眼力の確かさが示された演奏でした。

また、カゼッラは、劇的な展開と幻想的な旋律とをノセダがよく腑分けし、聞き手の注意を惹きつけて離さない音楽を作り上げました。

日本において必ずしも演奏頻度の多くないカゼッラながら、その作品の持つ魅力が今回の公演を通して広く示されるとすれば、意義深いことと言えるでしょう。

そして、『3つのオレンジへの恋』はプロコフィエフのある意味で魔力的ともいえる音楽作りに正面から挑んだ密度の高い演奏で、特に木管楽器の抑制された躍動感が印象深いものでした。

このように、今回は、3つの作品を通して、ノセダの手際のよさと楽団の適応力の高さが示された公演となりました。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1986th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK symphony Orchestra held the 1986th Subcription Concert at the NHK Hall on 10th June and broadcasted via the NHK FM on 15th June 2023. In this time, they performed Prokofiev's The Love for Three Oranges and the 2nd Piano Concerto, and Casella's Symphonic Fragments from La donna serpente. Solo piano was Behzod Abduraimov and conductor was Gianandrea Noseda.

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