「自民党総裁選」と「合流新党代表選」には何が求められるのか

昨日、立憲民主党と国民民主党などが合流して結成される新党の代表選挙が告示され、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の泉健太政務調査会長が立候補しました。

また、本日自由民主党の総裁選挙も告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政策調査会長が立候補の届け出を行いました。

新党の代表選挙は9月10日(木)に投開票が行われ[1]、自民党の総裁選挙は9月14日(月)に開かれる両院議員総会で新しい総裁が選出されます[2]。

それでは、与党と野党第一党の新しい指導者が誕生するのに際して、われわれは何を望むでしょうか。

まず、自民党の場合は、安倍晋三総裁の後継を決めるとともに、新総裁は衆参両院での首相指名選挙を経て内閣総理大臣に選出されることが確実です。

自民党総裁として2012年9月以来8年、首相として2012年12月から約7年8か月を過ごした安倍晋三氏の後任となるだけに、3候補は「安倍時代」の継承を訴え、投票権を持つ国会議員や各都道府県の支部連合会も安倍氏の政策への近さを投票の判断の基準としがちです。

しかし、与党の党首であり、早晩行政府の長となる人物に求められるのは前任者の取り組みを継続することではなく、むしろ国民の福祉と国家の利益の増進のために日本の姿をどのようにするかとうい点を、長期的な見通しに基づいて人々に提示し、実行することでしょう。

そして、その過程において、安倍氏の評価すべき点と改善を要する事項とが明らかにされ、前者についてはより高め、後者については矯められることが必要となります。

一方、新党の場合は、これまで批判の対象としてきた安倍首相の退陣を受け、与野党の対立の軸が見えにくくなるという状況の中で、新しい政党のあり方をどのように作り上げるか、あるいはいずれ政権を獲得するときに備え、どのような国のあり方を目指すかを明示することを国民に訴えることが求められます。

もし、これらの点を訴求しなければ、新しい政党は野党第一党と野党第二党の合流によって党の規模は拡大しても、理念や政策が有権者の間に浸透することはありませんし、党の求心力を維持することも難しくなるでしょう。

あるいは、政権の批判は新党に一定の支持を与えることは出来ても、地力を与えることは出来ないことを考えれば、代表選という注目される機会をどのように活かすかは、枝野氏と泉氏の手腕が試される場面であるということが出来ます。

その意味で、自民党の総裁選も新党の代表選も、「安倍政権」を乗り越えられる人材がどこにいるかを見出すための装置として機能するか否かが注目されるところです。

[1]合流新党代表選が告示. 日本経済新聞, 2020年9月8日朝刊4面.
[2]石破・菅・岸田 3氏届け出. 日本経済新聞, 2020年9月8日夕刊1面.

<Executive Summary>
What Do We Want to the Presidential Elections of the LDP and the New Party? (Yusuke Suzumura)

The Presidential Election of the Liberal Democratic Party will be held on 14th September 2020 and that of the new party consist of the Constitutional Democratic Party of Japan and the Democratic Party For the People will be done on 10th September 2020. In this occasion all candidates of the elections shall overcome a shadow of the Abe Cabinet which decided to withdraw the position.

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