第71回NHK紅白歌合戦が示した限界と可能性

2020年12月31日(木)に放送された第71回NHK紅白歌合戦は、関東地区における総合テレビの平均視聴率が、第1部で34.2%、第2部が40.2%でした[1]。

今回は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という状況を受けて、無観客で開催されました。また、従来から用いられている別の会場との実況中継に加え、局内の複数のスタジオを併用して出演者が歌唱したり、歌唱する様子を仮想的に投影するといった工夫がなされていました。

こうした取り組みからは、種々の制約を余儀なくされる中で、制作者が創造力を逞しく発揮していることが窺われ、大いに評価すべきものです。

一方で、演歌歌手の出番にアイドル歌手などを共演させたり寸劇を行うといった、かねてから行われ、依然として是正されない過剰な演出や、例年以上に「内輪向け」の演出がなされている点については、依然として改善の余地があると推察されます。

それでも、かつては喧伝されていたものの近年では忘れ去られたかのような「東日本大震災からの復興」を正面から取り上げたGReeeeNの姿は、「福島県で結成された」という点を差し引くとしても、大いに好もしいものでした。

その意味で、今回の紅白歌合戦は、番組の可能性とある種の限界を示したと言えるでしょう。

[1]NHK総合「紅白歌合戦」. ビデオリサーチ, 2021年1月2日, https://www.videor.co.jp/tvrating/past_tvrating/music/02/nhk-2.html (2021年1月3日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the 71st NHK Kohaku Utagassen under the COVID-19 Pandemic? (Yusuke Suzumura)

The 71st NHK Kohaku Utagassen, Red and White Singing Contest, was held on 31st December 2020. They showed progressive mind to apply new technology under the COVID-19 pandemic, howevery there was excessive staging.

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