【追悼文】江田五月さんについて思い出したいくつかのこと

去る7月28日(水)、元参議院議長で法相や環境相を歴任した江田五月さんが逝去しました。享年80歳でした。

江田さんが実父の江田三郎の構造改革論を継承、発展させた現実主義的な立場から社会民主連合を率い、社民連を鎹として社会党と民社党の連携を模索したり、政策集団シリウスを発足させて社会党右派とも連合した改革勢力の糾合を目指すなど、1980年代半ばから1990年代半ばまで政界の一方の雄として活躍したことは周知のとおりです。

また、2009年に民主党政権が発足すると、2011年には社民連時代以来の盟友である菅直人首相に請われて法務大臣となり、議長経験者として初めて大臣に就任するなど、憲政史上の特記すべき事績も残しました。

ところで江田さんというと思い出されるのが図抜けた記憶力のよさです。

私が江田さんの記憶力のよさに関する話を初めて聞いたのは2006年のことで、2度目の修士課程と大学院博士課程の指導教員である飯田泰三先生が「江田五月ほど記憶力のよい人は見たことがない」と口にされたのでした。

飯田先生は学生時代に東京大学で丸山眞男に師事していましたから、江田さんとは同門に当たります。ですから、飯田先生は間近で江田さんの記憶力のよさを実感されたのでしょう。

一方、飯田先生自身も博覧強記ぶりでは他の追随を許さない方です。そのような飯田先生が称賛されるのですから、江田さんの偉才ぶりは際立つものであったことが推察されます。

そして、こうした江田さんの記憶力のよさは学問の分野にも大きく寄与しており、1999年に東京大学出版会から刊行された『丸山眞男講義録』の第5冊は江田さんが受講時に作成したノートを基に編集されています。

丸山の「武士のエトス」を巡る重要な論考を講義録の形で目にすることができるのも江田さんのノートがあったからこそと思うと、その意義の大きさが分かるというものです。

このように、政界に進出して三権の長となったものの学問の分野に進んでも一家を為したであろうと考えられる江田さんの功績は、今後も広く語り継がれることでしょう。

改めてご冥福をお祈りします。

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Satsuki Eda (Yusuke Suzumura)

Mr. Satsuki Eda, a former President of the House of Councillors, had passed away at the age of 80 on 28th July 2021. In this occasion I remember miscellaneous memories of Mr. Eda.

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