大谷翔平選手の「日本選手最多タイの通算175本塁打」の持つ意味は何か

現地時間の4月12日(金)、大リーグのロサンゼルス・ドジャースに在籍する大谷翔平選手が今季4号本塁打を放ち、大リーグでの通算本塁打数を175本として、松井秀喜さんが持つ日本選手の最多記録に並びました。

大谷翔平選手は、2021年7月4日に松井秀喜さんが2004年に記録した日本選手の年間最多本塁打31本に並びました。

その際に本欄が指摘したように、2005年から2020年までの16シーズンにわたり、松井選手自身を含め、野手として大リーグに所属した日本選手が年間最多本塁打記録を更新できなかったことは、一面において打撃術には優れていても長打力に劣るという大リーグにおける日本野手に対する通説的な考えが妥当であることを示唆します。

また、他面においては、2004年の松井選手が、日本屈指の長距離打者として大リーグに挑戦し、実力を遺憾なく発揮できたことを推察させるものでした[1]。

今回の通算本塁打記録も同様で、これまでにもその時々の日本のプロ野球界を代表する長距離打者が大リーグに挑戦したものの、長期にわたって活躍することが難しかったという点を含めて日本での実績を反映させることができないまま今日に至っていました。

そのような中で大谷選手がこれまで並ぶことも難しかった松井秀喜さんの記録に到達したことは、もちろん豊かな才能と、その資質をさらに向上させる不断の努力の成果です。

それとともに、いわゆるフライボール革命や様々な機器や手法の発達により、実力を備えた選手がより効率的に本塁打を放ちうる環境が整っているという日米の球界の現状の見逃せません。

従って、今後大谷選手が日本選手最多の通算本塁打記録を達成し、場合によっては今季中に秋信守選手が持つアジア選手の通算本塁打記録218本を更新したとしても、松井選手の功績も秋選手の偉業も色あせることはありません。

その意味で、新たな記録を樹立して歴史を塗り替えることは、それまでの歴史を過去のものとするのではなく、むしろ呼び起こす営みでもあり、新たな視座を通して先人の軌跡が改めてわれわれに示されるのです。

[1]鈴村裕輔, 2021年の大谷翔平選手は年間50本塁打を達成するか. 2021年7月6日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/a0cc62f26c53f2a0e59257f6dca28c66?frame_id=435622 (2024年4月15日閲覧).

<Executive Summary>
Mr Shohei Ohtani's 175th Career Home Run in Major League Baseball Shines a Light on the Past (Yusuke Suzumura)

Mr Shohei Ohtani of the Los Angeles Dodgers hit 175th career home run in Major League Baseball on 12th April 2024. On this occasion, we examine the meaning of Mr Ohtani's achievement to history of the MLB.

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