『クラシックの迷宮』で学ぶフランクと循環形式の魅力と影響力

昨日のNHK FMの『クラシックの迷宮』は、1822年12月10日に生まれたセザール・フランクを讃え、「セザール・フランクと循環形式~フランク生誕200年に寄せて~」と題して放送されました。

今回は、フランクの代表的な作曲技法である循環形式に焦点を当て、その特徴とともに、セザールに影響を受けた作曲家や、セザールの直接的な影響下にはないものの循環形式や循環動機を用いて作曲した人々の作品などが紹介されました。

「多楽章形式の楽曲において、1つあるいはそれ以上の主題素材(多くは冒頭部分)が、複数のあるいはすべての楽章にあらわれて、楽曲全体に統一感をもたらしているもの。」[1]と定義される循環形式が、フランクの交響曲において重要な役割を果たしているのは広く知られるところです。

その一方で、循環形式が具体的にどのような形をとるのか、あるいはどの程度まで普及した技法であるかという点については、必ずしも人口に膾炙しているとはいいがたいものです。

この日の放送では、司会の片山杜秀先生が得意の鍵盤ハーモニカを駆使してセザールの作品の中で循環形式がどのように用いられているかについて、音型の変化などを実演しつつ解説するとともに、ショーソン、大澤壽人、矢代秋雄の作品を取り上げることで、その広がりが示されました。

フランクと循環形式という組み合わせは珍しくないものの、そこにショーソン、大澤、矢代を組み合わせることは、他では見られない、この番組の独自の視点です。

こうした試みは、初学者にとってよりよい知見を提供するだけでなく、フランクの作品や循環形式に親しんだ聴取者にとっても発展的な理解をもたらすという意味で、重要な機会を提供します。

さらに、パリで学んだ大澤やフランクに傾倒していた矢代に注目することで、フランクの影響力がヨーロッパにのみ留まるものではなく、地域を超えたある種の普遍性を備えていることを力強く証明することに成功しました。

12月10日という放送日がセザールの生誕満200年に当たること、さらに番組の最後に紹介したのが、フランクに心酔したピエルネの編曲により、1915年にその没後25年を記念して発表されたピアノ曲『プレリュード、コラールとフーガ』の管弦楽版であったということを含め、いつもながらに委曲が尽くされた今回の『クラシックの迷宮』でした。

[1]海老澤敏, 上参郷祐康, 西岡信雄, 山口修監修. 新編 音楽中辞典. 音楽之友社, 2002年, p.316.

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Gives a New Viewpoint for Franck and His Influence (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured Franck on 10th December 2022. It might be a meaningful opportunity for us to understand Franck's method of Cycle From and its impact for the next generations.

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