Rソックスの袖広告が年間23億円のカラクリ

去る12月5日(月)、日刊ゲンダイの2022年12月6日号27面に連載「メジャーリーグ通信」の第128回「Rソックスの袖広告が年間23億円のカラクリ」が掲載されました[1]。

今回はボストン・レッドソックスが2023年のシーズンからユニフォームの袖に企業広告を縫い付けることになった経緯とその影響を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。


Rソックスの袖広告が年間23億円のカラクリ
鈴村裕輔

大リーグの広告は、2000年代に入ると無地のバックネットに映像を重ねることで試合を中継する国や地域に合わせて最適化した内容を流すなど、絶えず進化してきた。

さらに、大リーグにおける広告のあり方は2023年のシーズンから大きく変わる。大リーグでは昨年3月に締結された最新の労使協定でユニフォームへの広告を解禁し、来季からレッドソックスが初めてユニフォームの袖に企業のロゴマークを印したワッペンを縫い付けることになったのである。

従来、球界がユニフォームへの広告を禁止してきたのは、ユニフォームこそある球団を他の球団から区別する象徴的な存在とみなされてきたからだ。

また、選手の移籍や大リーグとマイナー・リーグとの間の移動が頻繁な球界にあって、選手の顔触れが変わっても変わらないものがユニフォームであり、ヤンキースのピンストライプやドジャースの躍動感あふれる胸に縫い取られた文字などは、大リーグそのものを代表するといっても過言ではない価値を育ててきた。

一方、現在、全球団の帽子にニューエラの、ユニフォームの右胸にはナイキのロゴが入っている。

これは、両社が全球団に帽子とユニフォームを提供していることによる、例外的な措置である。しかも、両社のロゴマークを防止とユニフォームに記すことが決まった際には、人々から大きな批判が起き、改めて野球におけるユニフォームの存在感の大きさが示されたのであった。

それにもかかわらず今回方針が転換されたのはなぜか。その背景には、2017年にユニフォームへの広告掲載を禁止したNBAの成功の影響が大きい。

大リーグと同様に、NBAにおいてもユニフォームに広告を載せることは厳しく規制されてきた。

しかし、現在、NBAでは平均して年間700万ドルから1000万ドルの広告契約が結ばれている。規制緩和が奏功した形だ。

これに対し、レッドソックスが結んだ契約は、年間1700万ドルである。

選手の動きが激しく、コート全体を俯瞰して中継することが多いバスケットボールに比べ、3時間の試合でも選手が実際に動いているのは15分程度とされる野球は、かねてから広告の効果が高いことで知られてきた。

また、2.5インチ四方に広告を限定しているNBAを意識し、大リーグは4インチ四方と広告枠を大きくしたことも、大リーグのユニフォームの商品価値を向上させている。

何より、球界初の試みを大リーグでも指折りの人気球団であるレッドソックスが行っただけに、注目度も含め、高額の契約が実現したのである。

今後、他球団がどの程度まで追随するか、来季以降の動向が注目される。


[1]鈴村裕輔, Rソックスの袖広告が年間23億円のカラクリ. 日刊ゲンダイ, 2022年12月6日号27面.

<Executive Summary>
The Red Sox's Challenge of Wearing Advertisements on Their Jerseys and Its Impact (Yusuke Suzumura)

My article titled "The Red Sox's Challenge of Wearing Advertisements on Their Jerseys and Its Impact" was run at The Nikkan Gendai on 6th December 2022. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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