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「ピンチはチャンス」は根性論ではなく方法論だと『反脆弱性』が教えてくれた

「ピンチはチャンス」
「変化を脅威ではなく機会と捉えよう」

私はこれらの言葉が嫌いでした。
なぜなら、何の根拠もない、成功者による精神論だと思っていたから。

ピンチはチャンスって…そもそも、ピンチにならない人生のほうがイージーでいいやん。
変化なんて起きてほしくないし、仮に起きたときは、最小限の被害でやり過ごすので手一杯。
それを、「脅威ではなく機会と捉えよう」なんて、超絶余裕がある人の精神論マウントかよ・・・
頼むから、放っておいてくれ。
と、思っていました。

しかし、ある本を読んで、認識が180度変わりました。
その本は、次のことを教えてくれました。

  • ピンチをチャンスに変える力は、精神論などではない。ちゃんとした「能力」である

  • ピンチをチャンスに変える力・仕組みは、論理的に構築可能である

論理思考力、文章力、マーケティングスキル、のように、努力すれば誰でも身に付けられる「能力」であれば、話は別です。
「ピンチはチャンスに力」とは何で、どうやったら身につくのか?
この問いと改めて向き合ってみたいなと。

ということで、今回ご紹介したい本は『反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』です。

Xでもガチ書評を書いたところ、メルカリCEOの山田さんからも引用いただいてビックリたまげました。もう、それくらい気合を入れて書いた書評ですので、ぜひ最後までご笑覧くださいませ。

『反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』とは?

著者は、リスク・不確実性の研究者として有名なナシーム・ニコラス・タレブ氏です。
ペンシルベニア大学でMBAを取得し、後にパリ大学で博士号を取得。
元オプショントレーダーでもあり、確率論、統計学、心理学、哲学を融合させた独特の視点を持った著者です。

有名な著書は、以下の3作。
ざっくり一行ずつサマるとこんな感じ。

  • 『ブラック・スワン』:予測不可能で影響が大きい珍しい出来事(ブラック・スワン)について論じている。

  • 『反脆弱性』:システムや人々が不確実性や困難に直面したときに、それらから学び、成長する能力(反脆弱性)について探求している。

  • 『身銭を切れ』:決定者が自らの決定に対して直接的なリスクを負うべきだという考え(身銭を切る)を展開している。

で、今回紹介したいのが、真ん中の『反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』です。
そもそも、なぜ本書を手に取ったかというと、超お世話になっているMBAの教授がいらっしゃってですね。
その方に「本山さんは、絶対この本、気に入ると思う」と教えてもらったからです。

今にして思えば、「ピンチはチャンス…なんて言葉は大嫌いだ」と思っていた私の心を、MBAの教授は見抜いていたのかもしれません。
本書を読んだあとに、運命を感じました。

さて、回りくどい前置きはここまでにして。
・・・「反脆弱性」とは何か?

「反脆弱性」を理解するためには、3つのキーワードを並べて押さえておく必要があります。
本書の説明よりも、だいぶシンプルにギュッと表現してみました。

  1. 脆弱:変化が起こると損害を受ける

  2. 頑健:変化に耐えて一定を保つ

  3. 反脆弱:変化を利用して成長する

お気づきでしょうか。
「脆弱(脆い)」の対義語は、ふつうは「頑健(頑丈)」だと思うじゃないですか。
泥団子を分類しようとすると、崩れやすい団子と、崩れにくい団子、この2つがパッと思い浮かぶはず。
脆いの対義語は、頑丈。誰もがそう思うでしょう。

しかし、本書は新しい概念を教えてくれます。
脆いの対義語は「反脆い」、つまり「反脆弱性」。

ビジネス的な具体例を挙げると、2020年にコロナ禍に突入しました。このときに

  • 脆弱な企業:変化によって崩れて業績が落ちた

  • 頑健な企業:変化に耐えて業績を何とか維持した

  • 反脆弱な企業:変化を利用して業績を伸ばした

こんな整理ができます。

反脆弱性をつくる「バーベル戦略」とは

じゃあ、どうすれば「反脆弱性」をつくることができるのか?
1つの考え方に「バーベル戦略」があります。

バーベル戦略とは、「非常に安全な選択」と「非常にリスクの高い選択」を組み合わせること。

バーベルの両端には重りがあって、中央部分の棒は軽い。
資産の「重り」の部分(大部分)を安全な場所に置き、もう一方の「重り」(少量)をリスクの高い場所に置く。
これにより、安全性と高リターンのバランスを取ることができる。
・・・というのが、バーベル戦略の名前の由来です。

例えば、投資するときは

  • 90%は、「国債」などの安全なものに投資

  • 10%は、「上場したての企業の株」など変動が激しいものに投資

という配分になるでしょう。

あるいは、

  • 稼働時間の90%は、本業に費やする

  • 残りの10%の時間は、副業で何かを始めてみる。SNSとか、ブログとか、友人の会社の手伝いとか。どれか1つでも花開けば儲けもん

みたいな配分で仕事をするのもよいでしょう。
というか、私はこんな配分で仕事しています。
その結果、本業の会社を辞めても食っていける収入を副業で担保できていますし、副業がダメになっても本業に留まればいい状態にはなっています。
バーベル戦略によって、少なくとも「脆弱(変化に弱い)な状態」は脱却できました。

他にも、『反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』は、変化の目まぐるしい時代を生き抜く…
というか、変化の目まぐるしさを楽しむ方法について教えてくれます。

「VUCAの時代を生き残れ」ではなく「VUCAの時代を楽しめ」と言ってくれる本は、この本くらいじゃないでしょうか。

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