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世界の無痛分娩事情🌍

先日の岸田総理による会見で
取り上げられた無痛分娩🤰🏻
英語圏では"Epidural"と
一般的に呼ばれており,
当たり前の診療となっています.

しかしながら,
日本においては
2023年現在でも,
普及率は10%程度.

分娩時の痛みを和らげる方法は,
世界でどのくらいメジャーなのでしょうか?

フランス🇫🇷 80%

無痛分娩が普及している国として,
世界的に有名なのはフランス.

全ての妊婦が妊娠34週あたりで,
麻酔科医による診察を受けることでも有名です.

現在は出産の80%で
無痛分娩が選択されていますが,
1981年はわずか4%.

今の日本と同じように,
政府主導で無痛分娩が
保険でカバーされるようになって増加.

ちょうどウーマンリブなどの
運動も重なって広まりました.

アメリカ🇺🇸 67%

日本人でも駐在などで
出産をアメリカでした方の話を
よく聴きます.

3分の2が無痛分娩と
かなり高い感じがしますが,
かなり州ごとのバラツキは大きい.

たとえば,
アラスカは44.3%🦌
ニューヨークは85.2%🗽

アメリカでは産婦人科医が,
無痛分娩を勧めている背景もあります.

特にBMIが高いことが問題のアメリカでは,
無痛分娩からの帝王切開で,
安全な麻酔が提供できる点が強調されています.

イギリス🇬🇧 60%

1990年代には70%を誇っていましたが,
最近は少し減少気味.

ヨーロッパ全体で言えることですが,
硬膜外鎮痛以外にも
亜酸化窒素(笑気ガス)を吸入して
分娩時の痛みを和らげることが一般的.

助産師が分娩介助に立ち会うのが
当たり前なところが日本と似ています.

西洋医学における無痛分娩の黎明期は,
イギリス王朝のビクトリア女王が
クロロホルムで分娩時の痛みを
和らげたことから始まっています.

1847年1月に
世界で初めての麻酔薬を使った
無痛分娩を行なったのは,
スコットランドのシンプソン先生.

カナダ🇨🇦 40%

隣のアメリカと比べると半分くらい.
都市部では80%以上だったりしますが,
なにより広大な土地があるため,
なかなかサービスが行き渡らないのが難点.

麻酔担当医が2時間かけて
無痛分娩で呼ばれて行ったけど,
病院に到着したら
生まれていたという話もよくありました.

麻酔科医だけでなく,
麻酔トレーニングを受けた家庭医が
地方では麻酔業務を担っています.

麻酔科医と麻酔アシスタントで
当直している施設では,
手術麻酔中に無痛分娩コールがあると,
麻酔アシスタントが麻酔維持を行い,
麻酔科医が分娩室に行って
無痛分娩という体制でやっています.

スウェーデン🇸🇪 66%&フィンランド🇫🇮 89%

北欧はヨーロッパの中でも
比較的無痛分娩が高いのですが,
そもそも分娩数がスウェーデンが11万,
フィンランドが4.6万と少ないので,
数という観点では,
日本とそんなに変わりません(80万分娩,10%くらい).

フィンランドのガイドラインでは,
医師が無痛分娩を勧めるようにと
言及しているようです.

スペイン🇪🇸 70%

アメリカではヒスパニックの
無痛分娩率が低い事が有名ですが,
本場(?)スペインでは,
ガイドラインで推奨されている事もあり,
かなり高め.

これとは逆に,
ボストン在住日本人で無痛分娩を選択した人は
高いという発表もありました.

あまり文化と無痛分娩率に
関係はなさそうですね.

韓国🇰🇷 60%

15年くらい前まで,
日本と同じ数%でしたが,
保険適応になった事で急増.

集約型周産期診療で支えられており,
産科麻酔を専門とする麻酔チームが
担っているスタイルが大半を占めています.

ただ,韓国の合計特殊出生率の低さは
随一なので,
無痛分娩率が上がれば出生率が上がると
考えるのは早計.

まとめ

これから日本でも
少しずつ普及すると思われる
無痛分娩ですが,
各国の歴史や文化的な背景を
考えると,どのくらいまで
広まるでしょうか?

個人的には,何パーセントではなく,
妊婦さんにとって「当たり前の選択肢」と
なってくれるような社会を
作っていきたいと考えています.

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