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母はSDGsを知らない

不安になって、母にLINEをすることがある。
「ねえ、SDGsって知ってる?」と。

取材や登壇などに日々対応していると、始まる以前から共通言語ができていることがある。
たとえば、先日ムスカも登壇させて頂いた朝日地球会議。
「持続可能な未来」がテーマになっているだけに、おそらく来場者の殆どはSDGsに関心があったし、その前提でパネルディスカッションが始まる。

ハエという新たな資源を活用して、肉や魚を食べられる未来を残すことを目指すムスカにとって、ホームな環境であり、自分たちが発する言葉に頷いてくれる人たちがいることは、「崖から飛び降りて、落ちながら飛行機を組み立てる」スタートアップの住民にとって、癒やしにも、自信にもなる。
「起業家うつ」の実態が明らかになりつつある中で、こういった場があることは非常にありがたいことだ。
こういった場を用意してくださる関係者には、頭が上がらない。

一方で、そのことが不安になることがある。
東京という地に住んでいると、ふと忘れてしまうのだ。
実家の母は、メルカリがユニコーンと言われていたことも、田端さんも、ウィーワークのドタバタ劇も、そしてSDGsも知らないことを。
東京が、自分の半径5メートルが、社会ではないことを。
そんなとき、母にLINEをする。「ねえ、SDGsって知ってる?」と。

NewsPicksの動画広告の中で、こんな一言が放たれるシーンがある。

分かりあえない人に対して、がんばって説得するのって無駄な体力

頷きすぎて首がもげそうだ。

一方で、分かりあえない人、共通言語がない人を巻き込まねばならないシーンに、ビジネスの現場では遭遇する。
プラットフォーム、インフラを目指す場合、それはもう宿命なのかもしれない。
2025年にタンパク質の需要と供給が逆転することが予想される中で、それを解決する産業、インフラになることを目指しているムスカも例外ではない。
SDGsを知っている者同士で、共通言語がある者同士で語り合っているうちは、インフラ、プラットフォームにはなり得ないだろう。
その点で、共通言語が皆無に近い母とのLINEは、自分への戒めになっているし、自分の武器でもある。

母は、ハエ様と同じくらい、偉大だ。
そんな母には、大好きな「やげん堀」の七味唐辛子を、今日も贈るのです。

PS①
共通言語がないという点では、“「人の出入りのない村」社会に突然現れる”中途採用者は、SDGsを知らない母がオフィスに常駐しているようなもので、共通言語の存在に気付かせてくれる貴重な存在だ。
ただし、中途採用者は母とは異なり、いつのまにか違和感を発信しづらい空気ができあがっているので、それに先手を打つ仕組みを考えている、今日この頃。誰か壁打ちにお付き合いくださいm(__)m


PS②
ジンズで集中力を可視化するメガネ「JINS MEME」の開発と、集中力が金魚以下の現代人のための会員制ワークスペース「Think Lab」のプロジェクトリーダーを務める井上さんが、母の活用方法がまったく同じで、爆笑した。

自分で悶々と考え込む前に「遠い人に自分の仕事について話せ」とも言われます。
たとえば、62歳になる母親にかつてJINS MEMEのことを話したことがありました。すると「全然わかんない」「私がわかんないってことは売れないよ」とかって言われちゃって(笑)。
だけど、本当にそうで。仕事をしていると、似た考えを持つ人が周りに集まってくる。そうすると、どんどん自分が正しいような気になっちゃう。

『正しい母の活用法』(仮)という共著を、井上さんと書くことがあるかもしれない笑

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