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コロナ下でも出店を続ける

2月19日金曜日、担当している外食企業である、おいしいプロモーションが「田中そば店」ブランドのラーメン店を、埼玉県三郷市に新規出店した。
 外食はコロナ禍のダメージを最も受けた産業の一つであり、産業全体として見れば新規出店を遥かに上回るペースで閉店が進んでいるものと想像する。なので、なぜ外食企業がこの時期に出店するのか、と疑問を持つ人も多いだろう。が、理由としては、そこに機会があるからに尽きるのである。

人はなぜ外食に行くのか

 人が外食する目的は大きく3つあって、1つは食べる事で、もう1つは人とコミュニケーションを取る事であり、最後の1つは日常から解放される事である。参考までにホットペッパーグルメ外食総研の調査を貼っておくが、消費者が外食に求める上位の要素は、概ねこの3つに集約されることが分かると思う。

外食調査

出典:「外食の「レジャー性」への期待と予算を調査」

 ここからは私見だが、外食のそれぞれの業態は、顧客に求められる「食べる事:コミュニケーション取る事:日常から解放される事」の固有の比率を持っている。例えば席の間に衝立のある、とんこつラーメンの一蘭の比率は9:0:1である一方、一般的な居酒屋は2:6:2位であり、高級フレンチなどは3:3:4位であろうと思う。担当していないので想像だが、以前の投資先であるコメダ珈琲は、カフェの中では、かなり「日常から解放される事」を目的とされる比率が高かった業態では無いかと、味の面で大変競争力があるとは言いにくいメニューを食べにくる個食の顧客を見るたびに思う。

 この顧客が外食に求める要素の内、コミュニケーション需要は新型コロナウィルスによって大きく損なわれた。上場している居酒屋業態の数字は余り良くない。しかし、食べる需要については、人間の食事の総数は変わらず、ごく一部が内食や中食に移った程度で大きな変化は無い。おいしいプロモーションの各業態は、幸い食べる事を求められている比率が高いため、総需要は変わらないとしたら、人の流動が減った都心より、いま人が滞在している郊外に機会がある筈である。

焼肉が人間を日常から解放している可能性

 もちろん出店の意思決定プロセスはこんなに単純なものでは無く、2020年5-6月の外食各社の昨対売上の数字を見ながら、郊外のロードサイドにある個食業態と焼肉業態は健闘している事を理解し、そこからロードサイド店の可能性を経営レベルで議論し始めた。東京郊外のグループ既存店は、全てショッピングモールかビルインであり、コロナ下でも東京郊外のショッピングモールには新規出店を続けてきたが、ロードサイド店の経験や数字の蓄積は無かったので、商圏開発の要素が強い、大きなチャレンジであった。が、各自が持ち寄った知識や洞察に沿って、経営チームが見事に物件を見つけ出し、勝算と個店で勝てた後のスケーラビリティを分析し、経営会議に掛かるまで数か月、そこからは10週間での開店となった。
 この議論の過程で、焼肉業態の好調さに着目し、いま業態としては扱っていない焼肉にチャレンジすべきかも考えた。カスタマージャーニーを整理して、やっぱり食べる直前に好きなだけ焼けるから少々ウィルスのリスクがあっても安心なのかとか、そもそも強力な排気ダクトが付いてる業態なので、換気回数が10-17回/時と多く、感染隔離病室のそれ(12回/時)を超えるレベルの空気の清浄さが好評なのかとか、色んな議論があったが、全然しっくり来なかった為、焼肉参入計画はボツとなった。
 上記は半ば冗談だが、焼肉業態のコロナ禍での好調さの背景には、日常からの解放を求めて焼肉に行く人が、外から想定していた以上に多かった、という事であろうと思う。だとすれば、提供価値としてグループが持つ経験とは少し異なっている。

時代に合った安心なお店作り

 出店業態が決まると、お店のフォーマットの議論になる。似た業態を現状有姿で引き継いだ上で、大胆に席数を減らす改装を行い、コロナ禍において安心を生むに十分な隣席との距離を取った。内装の写真を見て頂ければ、一般的なラーメン店と比べて、カウンター席のスペースが広い事が、お分かり頂けると思う。

三郷内装

 また、外装にも手を入れて投資し、一般的なロードサイドのラーメン店と比べると、モダンで品質感のあるものとした。品質感と清潔感は異なる概念だが、実際にはかなり相関しており、品質が低い外装に清潔感は感じないものだからである。ただ、ここは更に洞察を深めるべき点でもあり、いっそクリニカルな白さにした方が清潔そうなのではとか、消費者は病院の様な場所でご飯食べたくないのではとか、検討と検証が為されていない選択肢は沢山ある。

三郷外装

 最後に、出店する上で最も重要な、地域で1番のラーメンを提供できそうかは今回も真剣に考えた。田中そば店のラーメンは、塩とんこつベースで、豚骨ラーメンでは極めて珍しいクリアな清湯スープ。豚骨ラーメンの上善如水と勝手に呼ばせて貰っているが、チャーシューの旨味をスープが邪魔せず、とことん味わえる構成になっている。調べた限り、周辺に味が近い淡麗系のラーメン店は無く、これは満足して頂けるのではと僕は思っている。

三郷商品

 開店初日は、昼はサラリーマンの方、夕方はファミリーの方で何人かの行列が続いた様だが、グループの自信作なので、お近くの方には是非お越し頂きたい。安心して食事がお楽しみ頂けると思っている。


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