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コロナ下でのPEファンド

新型コロナウィルスにダメージを受けている産業に対する、投資の意思決定は難しい。事業計画の前提として、ダメージからの回復度合いを予想して、それにベットする様な形にならざるを得ないという、マクロベット型の投資になり、かつこのマクロ環境に対する専門家がおらず素人予想に依拠する事、並びにその賭けを悪い方に外した時、予想外のダウンサイドが起きたのでは無く、新型コロナウィルスのダメージが長引くというのはごくありふれた見立てで、それを外してどうするという批判が避けられない、というファンドマネジャーの心理的抵抗感ゆえである。

この環境下における投資の意思決定として、4つくらいの選択肢が考えられる。

1.新型コロナウィルスにダメージを受けている業態には投資しない

ECやSaaS、在宅時間の伸びに消費量が連動する様な郊外型の日用品小売りや在宅サービスなど、新型コロナウィルスによるダメージを受けていないか、あるいはむしろプラスになっている産業は相応に存在するので、暫くの期間は投資対象をこれだけに限定するという考え方は有り得る。が、新型コロナウィルスの影響が完全にニュートラルならともかく、プラスになっている業態だと、いつかはそのプラスは収束するのか、あるいは新しい生活様式が当面は定着して、プラスが継続するのかをベットしないといけないのは変わらない。また、新型コロナウィルスの影響がプラスに働いている様な業態のバリュエーションは跳ね上がっていて、投資するには大変高価であるという難点もある。

2.新型コロナウィルスのダメージが継続する前提の低いバリュエーションで買収する

それが出来れば苦労はしない。

3.新型コロナウィルスからの回復へのベット要素を、ポートフォリオとしてコントロールする

スマートな前提である。ファンド全体の投資額の、例えば20%程度にその様な性質のあるポートフォリオを限定すれば、例えダウンサイドが発生してもファンド全体への影響は限定的になる。一歩進んで、新型コロナウィルスのダメージが長引くとプラスになる投資先と、長引くとマイナスになる投資先を両方持って、ポートフォリオ内でリスクを相殺するという考え方も有り得る。新型コロナウィルスは、大きなマクロ変動要素なので、これ位のリスクヘッジをする価値はある。が、仗助が「なるほど完璧な作戦っスねーーーっ 不可能だという点に目をつぶればよぉ~」と言いそうではあり、マクロでババ引いた方のチームメンバーのモチベーションが大変下がるのは間違いない。

4.来た案件ベースで考え、他ファンドがどれ位踏み込んでるかを参考にする

オポチュニスティックで大変よろしく、かなりのPEファンドが実際この方針であろうと思われる。

理屈を色々こねても、最後は案件魅力度次第というのがM&Aの世界なので、オリジネーションに励むのが吉ではあろう。最後に、やや蛇足ながら、最近考慮に入れた方が良いなと考え出しているのは、人材マーケットの厚みの減退である。コロナ禍の前と比べると、人の寄らば大樹志向が高まり、良い人材が転職市場に出てきにくくなっているのを感じる。特にもともと果敢にリスクを取る性向の人が少ない管理系の人材は、その傾向が顕著かもしれない。カーブアウト案件など、管理部門を抜本的に再構成しないといけない投資については、この人材マーケットの動向が投資後のボトルネックになる可能性を、リスクファクターとして検討すべきだろう。リーマンショックの後も、2-3年そんな期間があった様な記憶がある。良いチームさえ一緒なら、大抵の危機は乗り越えられると、生来やや楽観的な僕は、良いチームが作れない時に何が出来るかというのは、考えてしまう所である。

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