『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』を観た(2020/9/24)
ミロコマチコさんは、絵本作家であり画家でもある。
映画『万引き家族』の題字や、伊勢丹の期間限定の紙袋や書籍の装画等にも起用されているらしく、活躍の幅は広い。
2019年から活動拠点を奄美大島に移されたらしい。
ミロコマチコさんの作品を展示する『いきものたちはわたしのかがみ』という展覧会は、木々の生い茂る宇都宮美術館で開催されていた。
木々に囲まれている事が良く分かるガラス張りの会場入り口のフロアには、山車を曳く動物たちと、その動物に纏わる文章が2種類展示されていた。この作品は山形ビエンナーレの為に作成されたものらしい。
可愛らしい表情の動物と山車は、メルヘンチックで絵本の中から飛び出してきた様だが、作者の過去の記憶を交えたような文章と動物目線の様な文章とを併せて鑑賞すると、野生動物と人間との間にある溝の様なものも感じる。
ライブペインティングした作品も展示されており、音楽とともに作り上げられた作品らしく激しく踊るようなタッチだった。貼り付けられた紙やビニールは即興で閃いた演出なのだろうか、躍動感が凄い。実際にライブペインティングしているところを観てみたい。
絵本作家としての作品も画家としての作品も、どれも岩肌の露出した荒野のような荒ぶる野性味のあるタッチで、絵本の『まっくらやみのまっくろ』『ドクルジン』は特に生命の力強さが爆発しており、独創的な擬音語もあいまって得体の知れない恐怖すら感じた。
こんなにも力強い作品を創作されている方の絵が、本当に伊勢丹の紙袋や書籍の表紙にマッチしているのだろうか。と懐疑的になっていたが、後に続く展示スペースでそれぞれに相応しい絵を創り上げていることを理解して脱帽した。
『味の手帖』の料理の絵はとても美味しそうだし、子どもの頃に大好きだった”母の味”の様な雰囲気を漂わせている。デザイナーの方と作品を創り上げることによって起こる化学反応でもあるのだろうか。
求められているものをちゃんと創ることのできる方であり、自身の世界を最大限解放することもできる方って凄い。
あくまで個人的には美しいと感じる事は無かったけれど、鑑賞していると現代社会を生きている人間からは剥離されてしまった感覚を蘇らせるような、大自然に生きる生物の端くれである事を思い出させる展覧会だった。
期間: 2020/9/13〜11/29
場所: 宇都宮美術館
料金:一般1000円
※一部写真撮影可